猫背の危険性

寂しい時代

私は猫背だったのですが、まずはそのルーツについてお話ししたいと思います。 第一に私の生家についてです。 私は貧乏な家庭に生まれました。このことについてずっと引け目を感じていました。 築30〜40年くらいの平屋住まい、しかも間取りは1Kで部屋は八畳一間です。この家に父・母・姉・妹 の一家5人で暮らしていました。

ふとんはパズルのように敷き詰めていました。最終的には私の背が伸びたので、私のふとんは押し入れに 入れ、そこに脚を伸ばして寝ていました。

小学6年生までトイレは汲み取り式でした。ここまでは誰も経験していると思うのですが、うちの場合トイ レに入る際に必ず風呂を通らなければ入れませんでした。私は別によかったのですが、姉や妹は年頃の時 は大変だったと思います。しかもその風呂場には毎日のようにムカデやカマドウマなどの虫が出てきました。 虫が出てくるのは結構ストレスでした。

そのような家なので、友達を入れるのもとてもイヤでした。特につらかったのが家庭訪問です。他人に自 分の家の中を見せるということで、とても屈辱でした。

でも家の内側っていうものは住んでいる人以外分からないものです。が、外観はというと、父が建築板金 職人だったため、家の周りはその道具や材料で散らかっていました。家の外がそれで埋まってしまう感じで す。

また古い家だったので、見た目としても汚い感じでした。 そんな家に住んでいた私は、始めは気にしてはいませんでしたが、小学高学年になり、他の人の家と比 較した時に、とても寂しく感じました。いつしか住んでいるところにおいての自信をなくしていました。貧乏だと 思われたくなかったのですね。

忘れもしないのが中学2年のときです。私の横の席に転入生の女の子が座ることになりました。いろいろ 話している間に意気投合し、私もその子を好きになりました。

が、しばらくしてその子がこんなことを言ってきたのです。

「そういえば、昨日篤史の家の前を通ったよ」

「ガ〜ン!」

なんで知ったのだろう・・・家が遠いはずなのに・・・ うちの近くに塾があり、その塾に行くにはわたしの家の前を通らないと行けないのです。私の家の前を通っ た時に私の小学生のときの同級生が教えたみたいです。

「余計なことをしやがって・・・」

その子には絶対に知られたくなかった自宅を見られてしまったのです。

今思うとくだらないことですが、そんなことを考えながら生きてきました。好きな子が出来ても「俺は貧乏だ から服もないしどこも行けない・・・だから付き合っても仕方がない」そういう寂しい生活を送っていたのです。

 

「危険信号」に気づかなかった、小・中学生時代

生活はそんな感じでしたが、身体はというと、健康とは言えませんでした。 身体は時として「危険信号」を訴えているときがあります。しかしほとんどの方がその「危険信号」に 気づかないものです。

私が体験した「危険信号」を挙げてみます。

◆ 両膝の間が離れていること、つまりO脚に気がついた。

◆ 前屈して指先がつかなかった。

◆ 股関節が70°くらいしか開かなかった。

◆ 足のうちくるぶしの前方の骨がボコッと出てきて痛くなった。

◆ ボールを思いっきり投げたら、「ピキッ!」と肘に衝撃が走った。

◆ 背筋運動が出来ないことに気がついた。

◆ 膝が痛くて走れなくなった。

◆ 勉強中、ノートに顔を近づけて勉強していた。

◆ 全校集会など、長い時間立っていると腰がつらくなった。

◆ 体育館でずっと座っているのが、腰やお尻が痛くて耐えられなくなった。

◆ 中学3年のときに1.0で自信のあった視力が、1年で0.3に低下していた。

◆ 靴の踵の減り方が外側から擦り減っていることに気がついた。

◆ 2週間に1回くらいのペースで喉が痛くなっていた。

◆ よくお腹をこわした。

◆ いつも「顔色が悪い」と言われていた。

ざっと挙げてもこのくらいありました。自分では何か健康でないなあとは薄ら薄ら感じていました。ただ危 険信号がこんなにあったとは・・・これに当時は気づいていなかったわけです。

特に「毎日どこか具合が悪い」ということもよくありましたし、その度に近所のお医者さんに行き、薬をもら って服用していました。薬が効く時もあれば、なかなか治らない時もありました。それはそれで仕方がないと 思っていたのです。その状態が「真の危険信号」だということもつゆ知らず・・・

 

走るとなぜか吐き気が・・・

そんな状態の私でも夢を持っていました。貧乏人で不健康の私が見た夢は、 「プロ野球の選手になること」でした。野球選手は活躍するとお金がたくさんもらえる、そしてヒーローにな れる、そういう夢を漠然とみてきました。

中学3年のときです。先生やクラスメイトから、私は学区のトップの公立高校に進学するものだと思われ ていました。自分の中学の中では、野球より勉強や学級委員という方面で知られていたのです。

しかし私が悩み抜いた中で選んだ進路は、神奈川県内で有数の野球の名門校である、横浜商業高 等学校(Y校)だったのです。選択理由として、公立高校だったので学費のことを考えなくてよかったという こと、公立高校で唯一甲子園を狙えるということ、そして最後の決め手になったのは、甲子園で活躍して いる先輩方への憧れでした。胸にYの字があるマリンブルーのユニフォーム、このひと際輝きを放った選手の 躍動している姿を目に焼き付けていました。ある意味運命的なものを感じていたのです。

ただし野球というスポーツはお金がかかります。最低でもユニフォーム、グローブ、スパイクは必要です。ユニ フォームは練習用で最低2つ、試合用も必要です。グローブは硬式になると3、4万円はします。2万円 台の一番安いグローブを探して買って来たことを覚えています。スパイクは中学の物を引き続き使いまし た。お金がかかることだったので、とても気になりました。

さあ憧れの硬式野球部に入部したのですが、入部間もないときは、体力強化のため毎日4kmほど走り ます。

が、このときにちょっとした異変に気づいていました。

走るとなぜか毎回吐き気がしていたのです。走り終わると気持ち悪くて「どうしよう・・・」と思っていました。

「これはなんだろう?」

毎週高校の近くにある大学病院に通いました。担当医からは、 「鼻水が喉に落ちてくるので、調子が悪くなるのではないか?」 という説明でした。

高校生の私は正直者なので鵜呑みにしていたのですが、今思うとわけの分からない説明ですよね?鼻 水が喉に落ちてどうやって調子が悪くなるの、と疑問に思うでしょう。そんなことなので結局治るわけでもな く、毎回走ると吐き気がするので、セーブしながら走っていました。

後で詳しくお話ししますが、吐き気がするときって、「胃腸に行く神経の通り道である、首の筋肉が張って いる」「頚椎の歪みなどにより、自律神経が乱れている」もしくは「猫背などの不良姿勢により、胃が圧迫 されて負担がかかっている」ケースがあるのです。私の場合、後の2つが理由だったと推測されます。

 

腰痛発症と夢へのピリオド

そんな中、先輩方のおかげで、1年生の夏に母校が甲子園出場を決めました。憧れの甲子園です。も ちろん私たち野球部員も同行し、アルプススタンドで応援しました。甲子園はとても暑いところでしたが、そ の「暑さ」を「熱さ」に替えてしまうような素晴らしい舞台でした。その「熱さ」に魅了され、「今度は自分もレ ギュラーを取って、甲子園のグランドに立ちたい!」そう強く願ったのでした。

しかしそんな想いとは裏腹に、甲子園から帰ってきてから、原因不明の腰痛に悩まされます。朝起きると 腰が痛く、また走っても痛いので、毎日練習を休み整形外科に通いました。整形外科では特に細かい説 明を受けず、腰の牽引をする日々。なかなか改善しませんでした。痛み止めも毎食後に服用していまし た。始めは「効いているかな?」という感じがありましたが、結局痛みが取れません。

この間、「もう野球が出来なくなるのではないか?」という不安の日々を送っていました。またほとんど練 習に参加できなかったので、同級生にも色眼鏡で見られているように感じて、彼らと話もできませんでし た。小学校から同じチームで高校まで付き合いの長い友人もいたのですが、そんな彼にさえも相談できな かったのです。そんな中私は何も解決策も浮かばず、その不安が「歩けなくなるのではないか?」という恐 怖に変わっていきました。そんな精神状態だったので、体調も悪くなり、保健室に行く日々が続きました。 その時の保健の先生にこんなことを言われました。

「このままでいいの?野球だけが人生じゃないと思うけど・・・」 私はその通りだと思いました。そのアドバイスを突っぱねてまでして野球を続けるハートはそのとき持ち得ま せんでした。そんな中、ある決断をします。

それは、「退部届を提出すること」でした。

私はこうして自分の夢にピリオドを打ったのです。

 

身体との戦い

野球を辞めて、しばらくして腰の痛みが軽減しているのに気がつきました。その状態を見て、かねてからお 誘いのあった軟式野球部に入部をします。

が、少しずつ腰痛が再発してきます。野球が出来ないほどではなかったので、結局最後までやりました。 そんな中で私の中で一つの考えが明確になってきました。

それは、「腰が痛くなったのは、筋力が不足しているからだ」ということでした。 当時私は167cmで体重が57kg。明らかに痩せていました。もっと筋肉を付ける必要があるのでは・・・と 感じていました。高校3年のときに部活の顧問にわがままを言って、バーベルやダンベル等のトレーニング器 具を買って頂きました。そして毎朝トレーニングを行なうのが日課になっていました。やっていくうちにこの分 野でもう少し詳しい勉強をしたいと考え、日本大学文理学部体育学科に入学します。

ちなみにこの体育学科は高校でも指折りの選手が集まってきます。陸上100mでインターハイを制した 人、のちにレスリングでオリンピックに出場した人、ボクシングのインターハイのチャンピオンなど全国大会出 場選手が普通にいました。そんな中で彼らと一緒に体育の実技を受けるのは大変でした。球技はごまか しが効くのですが、陸上とか水泳みたいな種目は基礎体力がものを言います。彼らに混じったときに、私 はいつも圧倒的に離されていました。

ただその後ご縁があり、フィットネスクラブにアルバイトとして入ることができました。身体を鍛えたいとかね てから思っていましたし、しかもフィットネスクラブに入会することのは貧乏大学生の私には会費が高くて現 実的ではありませんでした。フィットネスクラブでは、アルバイトスタッフは勤務時間以外はある程度自由に 施設を使っていいのです。しかもフィットネス部門のスタッフは、自らトレーニングして身体を作る事を求めら れます。トレーニングできることと学びを得られること、それは私にとってとても嬉しいことでした。大学在学 中の4年ほどの間、トレーニング理論から機能解剖学、バイオメカニクスなども実践を通じて学ぶことができ ました。特に自分のトレーニングも積極的に行ない、体重を半年で筋肉だけで7kg増やしました。正しい やり方で行なえば、筋肉ってついてくるものだなあと実感しました。

しかし、同時に分からなくなったことがありました。それは筋肉がついたにも関わらず腰痛が悪化したこ とです。腰痛には腹筋がいいと言われています。体幹を鍛えるためと言われていますが、なぜか腹筋をす ると腰が痛くなるのです。

この理由を全く理解できずにいました。

 

拒食症

トレーニングは大学4年間ずっと続けていました。その間就職活動がありました。そこで信じられないような 体験をします。ご飯が食べられなくなったのです。これは就職活動のストレスだと認識していました。私の就 職活動の時期としては、山一証券など大企業が倒産した年であり、また大学を卒業する人の人口が一 番多かった年でもあったのです。就職活動は困難を極めると言われていました。私もその波に乗ってしまっ たようで、「面接を受けては落ちる」という日々を過ごしました。一般的に大手企業と言われているところば かり受けていたこともあるのですが、全て不採用になったときはストレスも最高潮に達していました。その負 担が胃にも蓄積していたようでした。食べては戻し、時に電車のホームで吐いてしまうこともありました。スー ツのズボンの裾にその吐いて飛び散った汚れをつけたまま、面接に行ったこともありました。

ただそれは就職活動のストレスだけかというと、そうでもなかったのです。いつものようにトレーニングをする と、背中の痛みを感じるようになりました。「なんだろう」と当時は思っていましたが、トレーニングをすると背 中とお腹の筋肉が痛くて気持ち悪くなるのです。

つまり背中とお腹の筋肉で胃を圧迫していたのでした。特に猫背がそれを助長していたみたいで、胃が 痛いと背中が痛いという日々を過ごしていたのです。痛みがあると筋肉は防御反応で硬直します。これは 筋肉の痛みだけでなく、内臓が原因であっても同様です。元々猫背で背中や腹筋に負担がかかっていた 中、トレーニングをすることで筋肉により負担をかけて、よりその筋肉を硬くしてしまい、それが胃腸への負 担につながる。その悪循環を何度も繰り返していたのです。

またそういう状況だと身体の調節機能である自律神経も乱れます。しかも心療内科に通っていたので安 定剤が出されていました。昼間フィットネスクラブの現場に立っていられないほど眠い日々が続きました。 今思うと身体にいいことは何もしていなかったのですね。

この期間で体重が12kgも落ちました。「減量中のボクサー」と言われたほどです。 この異変に気がつき、しばらくトレーニングを止めました。食べ物も朝食はご飯のように負担がかかるもの ではなく、ヨーグルトとフルーツ、そしてパンに切り替えました。まず吐くことが無くなり、少しずつ体力が回復 してきました。

 

身体の気づきが自分を変える!

このページを読んでいる方々は、猫背など姿勢が気になる方、肩こりや腰痛、頭痛等慢性的な症状に 苦しんでいる方が多いのではないでしょうか? また「姿勢が悪くて見た目が気になる」という方もいらっしゃ ると思います。

近年身体についての意識が高くなっています。自分らしく生きる土台として「美」や「健康」に意識がいっ ている人が増えてきているからです。よって自分でもいろいろ身体について改善しようという動きがあっても おかしくありません。

その中で伝えたいこと、それは「しっかりとした方法や考え方を理解すれば、だいたいど んなことでもよくなる」ということです。それは姿勢であっても症状であっても、です。そのために守って欲しい ことがあります。それは「我流ではやらないこと」です。いろんなことを創り出す人がいますが、こういう人は ほんの一握り、いや一つまみに過ぎません。また「本を見ただけ」「インターネットに出ていたからマネしてやっ てみた」「誰かに言われたから・・・」これらも全て「我流」です。本質的なことを理解していないで始めている からです。

私は腰痛に苦しみ、姿勢の悪さから来る様々な症状を専門家の目で診て対策を練ってクリアしてきま した。おかげさまで今は腰痛に苦しんだりすることはございませんし、その他の症状でつらいということはござ いません。このように自分で打開策にたどりつくためには、膨大な勉強量と経験が必要です。私の場合患 者様を施術するたびに気づきを得たり、いろいろ自分の身体をモルモットにして、トライ&エラーを何度も 繰り返してきました。そうやって猫背の直し方を確立してきたのです。

しかし上記のようなことを専門家でない皆さんが自分で行なうことは、とても難しいことです。中途半端な 理解で行なってしまうことが多いのです。お伝えしたい ことは「我流で治すな」ということと「何でもかんでも自分だけで行なわないで、ちゃんと専門家に頼って欲し い」という気持ちも含まれています。

治す為に一番ポイントになるのは、今までそれに対して苦労して克服してきた人やその直し方を理解し ている人に直接聞いたり指導を受けたりすることです。その極意について以降で触れていきたいと思います。

 

猫背を自分で治すのはNG!

一般人が考える猫背とは?

今姿勢について注目されてきています。本でも猫背に関する本が結構出されていますし、テレビや雑誌 でも取り上げられています。その中で、「猫背の直し方」的なものが多いのに気づくことが多いですね。

猫背を治すというと、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?「姿勢を正せばいい」「胸を張れば いい」とか思っていないですか?たまたまラジオでやっていたのですが、「胸を張って、両方の肩甲骨をくっつ けるように・・・」という解説がなされていました。猫背マイスターからすると、「おいおい・・・」と突っ込 みを入れたくなります。つまり「胸を張れば誰もがいい姿勢になる」わけではないですし、「胸を張れば 誰もが健康的な姿勢になる」というわけではないのです。

猫背の対策というと一般的に姿勢を整えればいいと考えられがちです。親に「姿勢を正しなさい!」とか 「猫背になっているわよ!」と言われた経験のある方、多いのではないでしょうか?

また猫背というものは、教育やしつけだと思われているようです。確かにその要因は必要ではありますが、 その中で重大な欠点に気づいてしまったのです。

それは、「どれがいい姿勢か?」これは子供だけではなく、親も理解していないということです。また 「猫背をどうやって治すのか」ということを知らず、「背すじを正した姿勢がいい姿勢」という型にはめてしまう ので、子供達の為になっていない直し方をしているケースが多いことです。

もう少し具体的な話をしていきたいと思います。

 

母親が叱っても子どもの猫背が直らないわけ

我が家の子供は保育園に通っているのですが、よくそこで見られる光景として、「鼻クソをほじっている」と いうものがあります。これについて母親は「汚いから鼻をいじらないの!」と注意します。でも一向に直りませ んよね?

これってなぜだと思いますか?

理由は簡単です。鼻の調子がおかしいから、鼻をいじるのです。皆さんも経験がありますよね?鼻をいじ りたくなったことが。ただ皆さんは鼻をおもむろにいじらないですよね?特に人前では、それは「汚いこと」だと 認識されています。つまり大人には「鼻クソをほじくることは汚いことだという認識があり、それを守る理性が ある」のです。

しかし子どもはどうでしょうか?子どもには理性というものは存在しません。それをしつけるのは、実は難し いことなのではないでしょうか?

同じことが猫背にも言えます。「姿勢が悪いわよ!」と言われても子供の姿勢が直らないのは、「姿勢が 悪いとかっこ良く、もしくは可愛く見られない」とか「目が悪くなる」「肩が凝りやすい」という考えがないので す。それ以上に「その悪い姿勢の方が今の自分にはラクだから」というだけだったりするわけです。自分で姿 勢を整えようとするだけで余計な筋力を使い、またその姿勢を維持することがストレスになります。背中や 首の筋肉が疲労し、パンパンに張ってくるのです。このような状況の中「姿勢を直しなさい!」と言っても、 子供の猫背が直ると思いますか?子どもは好き嫌いには敏感です。おそらくやらないはずです。

また親が姿勢を正せと言っても、どれが正しい姿勢か明確に示してくれる人はいないのではないでしょう か?背中をまっすぐにすればいい、そのくらいの感覚の方が多いのではないでしょうか?

実際姿勢を正すために、身体の重心付近である骨盤がどのような位置にあるかがとても重要な役割を 占めます。しっかり坐骨で座っているか、お尻の穴がちゃんと下に向いているか、そういうところがポイントにな ります。たいていの方はそういうポイントがつかめず、ただ「背すじを伸ばす」ことだけを強要させているケース が多いのです。

 

そもそも猫背は自分だけでは直らないもの

今までのお話をふまえた時に、猫背というものを自分で治すことの大変さがなんとなく伝わってきたと思い ます。そもそも猫背は自分では直らないものなのです。現に「猫背は自分で直る」的な記事を見て、本当 に猫背が直り、そのまま持続している人がどれだけいるのでしょうか?直らない人がいるから、いろんな本が 出てきているわけです。

そろそろ具体的な話に入っていきます。 猫背が直らない理由、それは「その方の姿勢の文化」にあります。猫背の人は猫背のままで今まで何 年、何十年生活しています。そうするとその人は自分の姿勢のことを「いつもの姿勢」と記憶しています。そ の記憶は頭だけでなく感覚的にも覚えているわけです。特にご自身で相当気をつけなければ、姿勢は猫 背の状態のままになっているのです。

皆さんならこれは感覚の問題だと言うかもしれません。逆に「正しい姿勢をインプットすれば直るので は・・・」と考えるのではないでしょうか?確かに「正しい姿勢の記憶をインプット」することは、猫背を治すう えでとても重要なことです。しかしそれだけでは難しいのです。その理由は「感覚だけでなく、身体も文化に なっている」ということです。

猫背でずっといることは、身体も「猫背仕様」になります。つまり猫背の姿勢に適した骨格や筋肉の 付き方に変わってくるのです。骨格の場合、猫背の姿勢で生活がスムーズに送れるように、脊椎、肋骨、 頭蓋骨、骨盤、大腿骨などの形や組織が変化してきます。つまり物理的に骨が変形したり、中の組織 が変わってきたりするわけです。

筋肉においては、過剰なくらいに使われて疲労が溜まってカチカチに固まった筋肉や、あまり使われずに 筋線維が細く小さくなってくる筋肉などが出てきます。コリコリに固まった筋肉を自分の力で柔らかくしたり するのは大変です。また使われていない筋肉を使えるようにするには、脳からの命令が的確に行なわれる 必要があるのです。これって「右利きの人が左手で全く違和感なく箸を使えるようになる」くらい難しいので す。

 

「運動で猫背が直る」が誤りのわけ

よくトレーニングやストレッチにより猫背が直る、と言う方がいらっしゃいます。

よく言われるのは、「猫背の人は背中の筋力が弱いので背筋を鍛えろ!」というものです。 ただフィットネスクラブの現場を見ていて、一つの結論に至ります。それは、 「猫背の人がいくら背筋を鍛えたからと言っても、猫背は直らず、かえって悪化する」

ということです。 背筋を鍛えることで、背筋で丸くなった姿勢を引っ張るというのが、「猫背改善筋力トレーニング」の主旨 なのですが、まず猫背で丸くなっている筋肉はそもそも筋力が弱くはないケースが多いのです。逆に筋肉が 盛り上がっていることの方が多いのです。

また背中の筋肉には大きく分けて「運動筋」と「支持筋」の二つに分かれます。「運動筋」とは文字通り 「身体を動かす」ために働く筋肉です。比較的大きな筋肉であることがほとんどです。背中の場合脊柱起 立筋と意味します。

これに対して「支持筋」とは、主に「身体を支える筋肉」です。「支持筋」は「運動筋」のアシスト役で、 「運動筋」の下に隠れて働く、いわば「縁の下の力持ち」なのです。特に背中の「支持筋」は多裂筋(たれ つきん)・回旋筋という筋肉を指すのですが、これらは脊椎の一つ一つを結びつけている小さい筋肉です。

背中が丸まっている場合、この「支持筋」が背中を丸めた状態で固まってしまっているのです。この「支持 筋」を柔らかく動かせる状態にしない限り、背中は一向に伸びて来ないのです。つまり、この部分が柔かく なってこない限り、いくらトレーニングをしたとしてもなかなか猫背は改善しないのです。むしろ無理矢理背 中を伸ばすような筋力トレーニングをする恐れがあり、背中を痛めてしまう危険性もあるのです。

また「運動筋」に着目すると、盛り上がった筋肉の上からさらに筋肉が乗り、猫背を直りにくくしてしまうわ けです。それだけならまだしも、その背中の筋肉をますます固くして、しまいには痛みを誘発してしまうことも あるのです。

次にストレッチに関してのお話です。当院の猫背矯正においてストレッチを多用しています。特に骨盤・ 股関節周りはいろんな方向から伸ばしていきます。また肩関節のストレッチもちゃんとやれば効果がありま す。

が、ポイントになってくるのは、「一人では上手く伸ばせない」ということです。例を挙げます。よく猫背で は、胸の筋肉が縮んで固くなります。この部分をストレッチするのですが、一般的に参考書などで書いてあ るやり方だとなかなか伸びないことに気がついた方もいらっしゃるのではないでしょうか?また胸のストレッチ 運動を行なったとしても、猫背の改善のためのストレッチにはならないのです。ただ漠然とストレッチを行な ったからといって、猫背の改善にはつながらないのです。

 

休日の朝、背中が痛いのは黄信号

猫背の方の症状として、肩こり、腰痛などがございます。その中で特筆すべきものとすると、背中の痛み です。

よく整骨院で背中の痛みを訴える方は、「朝起きた時に背中が痛くて身体が起こせなかった」と言いま す。よく話を聞くと、1つの共通点が出てきます。それはたいてい「いつもより長く寝たとき」ということが多い のです。つまり「休日の朝」が痛むわけです。

背中が痛いというと、よく「どこか内臓が悪いのではないか?」ということを気にされる方がいらっしゃいま す。テレビや雑誌などで「背中の痛みに要注意!」という記事をよく見かけます。背中が痛む疾患として、 胃、膵臓、腎臓などがあります。 ただちゃんとした専門家が診れば、その背中の痛みが内臓からくるもの なのか、筋肉が痛んでいるのか、などが分かります。ちなみにこの休みの日の朝、背中が痛いパターンとし て、「背中の筋肉が固まり、痛くなる」ことが多いのです。少し細かくご紹介します。

猫背だと背中の筋肉に負担がかかります。ずっとその状態が続くと「猫背仕様」の筋肉状態を維持しよ うとして、筋肉が固くなってきます。この場合前述の脊椎と脊椎の間を支える「支持筋」が固くなっていま す。この状態になると自分で猫背を改善しようと思ってもなかなか背すじがまっすぐになりません。ではこの 状態で寝るとどうなると思いますか?通常は猫背であっても熟睡できていれば自然と力が抜け、筋肉は 緩んでくるものです。しかしこの状態だとなかなか筋肉が緩まないため、逆に筋肉に負担がかかっていまい ます。すると徐々にその負担が痛みに変わってくるわけです。本来睡眠をとって筋肉を休ませたいわけです が、逆に負担がかかっている姿勢が続いているので、筋肉を休められていないわけです。その状態で長く 横になっていたら、負担がかかり、痛みが出てくるのは既定路線だというわけです。

また「痛くて休めない」ということは、別の視点から見てもよくないことです。体内は自律神経で調節され ています。「活動」と「休息」のバランスをとっている自律神経は、「疲れたら寝る」という命令を送るわけで す。しかしこのような猫背の場合、睡眠を行なうことで本来疲れがとれなければならないのに、疲れが取れ る前に痛くなってしまいます。ということは、完全に休息できない状態でいるわけです。これが数日、数ヶ 月、もしくは数年も続いたらどうなりますか? 背中の痛みって、こういうサインでもあるのです。このような背 中の痛みが生じた時に、必ず専門家に相談すべきなのです。

 

猫背矯正グッズの可否

猫背を治すのに、猫背矯正グッズなるものがあることをご存知ですか?大きく分けると、猫背矯正ベルト や猫背矯正下着です。これらのグッズですが、正しく使用すればそこそこの効果が得られるものもあるので す。

ただ実際いろんな方に着用させたときに、「肩がこった」「背中が痛い」とか痛みを訴えるケースがありま す。それもそのはずで、「猫背仕様」の身体を無理矢理これらのグッズなどで矯正しているわけです。 猫背で固まっている身体を力ずくで矯正したら、固くなっている筋肉が悲鳴を上げるのは言うまでもありま せん。より筋肉に負担をかけ、痛みが出てしまうケースが多いのです。 特に身体が正しい矯正位を記憶 した状態で着用しないと、理想の形で矯正されないので、より悪影響になりがちです。

猫背にはいろんなタイプがございます。ただ背中が丸くなっているだけの猫背や、肩が前方に出てきてい るもの、顎が上がっているものなど様々です。すると猫背でもタイプにより矯正の仕方が変わるものです。

私なら専門家に猫背を診て施術をしてもらってから着用することをお勧めします。猫背矯正の施術 を行なうことで、より正しい姿勢になってきます。その効果を持続する為に矯正グッズを使用するのです。 本人が正しい矯正位を無理なく作れる、この状態を専門家に施術してもらい、その状態で矯正グッズを 着用することで、初めて効果が出てくるのです。またその猫背を矯正する効果を持続することができるので す。

肩や背中はストレスが溜まりやすい部分です。無理矢理こういうグッズを用いると、よりストレスが溜まり、 肩こりなどがひどくなってきます。そうやって結果的に「矯正グッズが家で眠っている」という方も多いのでは ないでしょうか?私の知っている限りですが、矯正下着とか高いもので数万円しますから、出来れば有効 活用して欲しいものですね。

 

あなたの「猫背直し」があなたを壊す!?

今までのお話で、自分で猫背を治すことはあらゆる危険性があることがご理解頂けたのではないかと思 います。もちろんご自身では悪気があってやっているわけではないですよね?また自分で直そうという気持 ちってとても大切なことです。「直そう」という気持ちがないとなかなか直って来ないのですから・・・

でもご自身で行なう「猫背直し」は、直らないというだけではなく、上記のような危険性があるということ、 これを理解して頂きたいと思います。

ダイエットを例に挙げます。ダイエットにはいろいろ方法があると思います。ただ原理原則というものが明確 になっています。それは「摂取エネルギー<消費エネルギー」という法則です。つまり「食べている量より消 費しているエネルギーを増やせばいい」ということです。

ただ食べている量を減らしたからと言って、野菜だけ摂っていたり、または「何も食べない」という選択をす ると、体重は減りますが身体も壊れますよね。かといって「消費エネルギーを増やしたいから、運動量を増 やしたい」ということで、1日8時間ランニングをしていたらどうでしょうか?筋肉だけでなく関節等にも負担が かかり、痛めてしまうかもしれません。

どれも原理原則はあれど、その意味や方法をしっかり理解していないと、結果が出ないばかりか、病気 やケガの原因となるのです。

同じことが猫背にも言えます。アナタの猫背は、今に始まった話ではないはずです。かなりの「年季」が入 っているはずです。その時間がかかって作られた猫背を治すには、それなりの方法と考え方が必要な のです。ただその場で姿勢を整えたからといって、直るものではないのです。

 

猫背を治す7つのポイント

最強の極意は、「専門家と一緒に治す」こと

今まで読んできて、「ではどうやって猫背を直したらいい?」という疑問が浮かび上がっていることと思いま す。

それのそのはずです。タイトルが「猫背は自分で治すな」ですから・・・

ではどうやって治すのが理想なのでしょうか? それは、

「専門家と一緒に治す」ということです。

つまり「自分で出来ること」と、「専門家しか出来ない、または専門家にしか分からないこと」がある のです。

例えばスポーツや習い事を始めた時のことを思い出してみて下さい。始めは何にも分からないわけです。 したがってたいていコーチや先生が教えてくれます。また時には「このやり方で素振りを毎日100回しておい て」「10〜12ページまでの問題を解いてきて」という宿題が出されるわけです。これを愚直にやっていくことで 習得してきたわけです。

またプロ野球やJリーグを見てみて下さい。彼らにはプロになったといえどもコーチが存在します。あれだけ 上手くても教えてもらっているのです。 ということは、本来身体にもコーチになるような専門家が必要なのです。プロスポーツ選手にはトレーナーが います。プロスポーツ選手は身体を使う仕事なので、身体のケアを専門とした方が必要だと思われるので はないでしょうか?しかし彼らと私たち一般人のどちらが悪いのかというと、おそらく一般人の方です。それは 身体についての意識がプロスポーツ選手より低いのと、知識が乏しいからです。

そういう目で見た時に、私は「専門家と一緒に直していくというスタイル」を作っていくことをお勧め致しま す。

もちろん自分でできることは、自分で行なって頂きます。例えば「猫背矯正専門院」に 週1日通ったとします。1週間は時間に換算すると24時間×7日=168時間です。つまり施術時間を30分 だとしたときに、167.5時間は専門家の管理下に置かれていないわけです。ということは、何が起きているの かわからないわけです。その対策はご自身で行なって頂きます。

逆に専門的な知識は勉強するのが大変です。整骨院や鍼灸、マッサージなどの国家資格を得るのに 最低3年間学校に通うのですが、学校で習った知識や技術がそのまま使えるとは限りません。各修業先 で教わることもあり、またセミナーや講座などを受講してお金をかけて学ぶこともございます。時間もかかりま す。私の家には医学書や健康書、心理学、倫理学、自己啓発系、ビジネス書など本棚があふれ返って います。そのくらい勉強してきているわけです。

またストレッチなどの運動でフォローできるのならご自身でやって頂きますが、専門家でないと気づかない 部分などがたくさん出てきます。自分では見えない背中の部分や自分で触ると危ないといわれてい る頚椎などは、専門家に任せた方が安心です。一緒に治す利点はそういうことにあるのです。

 

専門家の役割とクライアントの役割を認識する

「身体を治す」というと、「自分で治す」のか「専門家(施術家)が治す」のか、もしくは「ほうっておく」のか、 この3つのケースがほとんどだと思います。最後の「ほうっておく」はキレイに言うと「自分の自然治癒力に委 ねる」ということですが、実は「ほうっておけばいつかは直るだろう・・・」という「どうにかなる」という考えですよ ね?確かに身体には自然治癒力が存在しますが、何でもかんでも自然治癒力に委ねるのは、とても危 険なことです。理由は簡単です。もしアナタに自然治癒力が働いていたら、身体は悪くならないはずだから です。

すると選択肢は「自分で治す」と「専門家が治す」になります。始めは手っ取り早く自分で直そうとすると 思います。自分で直せばお金もかからないわけです。今は情報化社会なので、ちょっとインターネットで調 べれば欲しい情報は容易に入手できます。しかしそれで直らないと、本や雑誌等を購入したりいろいろな グッズを買ったりします。でも直っていないですよね?

そこで初めて専門家に委ねるケースが多いのだと思います。専門家とお話しすると、たいていその原因が 理解できます。その場で自分達の悩みも解決されることが多いものです。

しかしその効果が長続きしないのです。長持ちしないのです。その原因は簡単です。身体はその場で変 わりますが、日常生活や習慣が変わっていないので、すぐ元の悪い状態に戻ってしまうからです。

冷え症の専門院では、施術と同様にカウンセリングや指 導で対策法や食べ物、飲み物の指導を行なっています。基本的にコーヒー等はカフェインが入っている ので、冷やす飲み物だというお話をするのですが、治療後にコンビニで缶コーヒーを買って飲んでいる方が いらっしゃいました。「これじゃあ直らないだろ!」と誰もが思いますよね?

しかしこれと同じようなことをあなたも無意識にやっていることが多いのです。特に姿勢においては、知らぬ 間に悪い姿勢をとっていることが多いわけです。よって普段の姿勢において、「いつもよりちょっと気をつけて 頂く」ということはして頂きます。またそのためにご自身の現状の姿勢についてご理解頂きます。

専門家の役割は、「現状をお伝えすること」「その改善方法を教えること」「実際に改善させるこ と」の3つです。特にクライアントご自身ではできないことを全て担うのが理想だと考えています。

身体を直していくのに、クライアントと専門家の役割分担が必要不可欠になります。本当に直していくと いうことを念頭に入れた時に、この形をいかに作るかがカギになるです。

専門家は猫背だけでなくいろんな症状において、「患者様と一緒に治すスタイル」をいうものをご提 案しています。患者様がいろいろ本や雑誌、インターネットなどで調べて、良かれと思ってやっていること が、誤っているケースが結構あるのです。その部分を専門家がサポートし、目的と方向性を示すこと で、より改善に向かうケースがほとんどです。今では相談だけにご来院する方も増えてきています。

 

「猫背の6タイプ」を知ろう!

当院では皆さんの猫背を知って頂く為に、6タイプに分類しています。皆さんはご自身の姿勢がどうなっ ているか分からない人が多いのですが、タイプを知ることで、より理解が深まります。

「猫背の6タイプ」についてご紹介したいと思います。

 

①円背型(えんぱいがた)

文字通り、「背中が丸まっている」というタイプです。背中が丸まるといっても背中の中央で丸くなるタイプ と、背すじはまっすぐしているのですが胸椎の上部付近で急激に丸くなるタイプとに分かれます。 脊椎一つ一つの動きが固くなっているケースが多いのが特徴です。

 

②前肩型(まえかたがた)

肩(ここでは肩関節)が前方に出ているものです。身体を横から見た時に肩が前に出ているのが分かる と思います。このパターンでは腕が最後まで上がらないケースが多く、野球やソフトボール、水泳など肩を 使うスポーツをやっている方は障害を起こしやすいのです。

 

③顔出し型(かおだしがた)

横から見た時に、身体と比べて顔が前に出ているものです。頚椎が前方に傾斜しています。このパター ンは頚椎がまっすぐになる「ストレートネック」になっていることが多いです。慢性の肩こりや頭痛に悩まされ る傾向があります。

 

④顎出し型(あごだしがた)

前から見た時に顎が突き出て「上から目線」になっています。背の低い方、PC作業が多い方に頻発し ます。このパターンはただ顎が出ているだけでなく、背骨や骨盤・股関節などにも歪みが出ていることがほ とんどです。肩こり、頭痛だけでなく様々な症状を引き起こします。

 

⑤巻き込み型(まきこみがた)

肩の主要な筋肉である僧帽筋が後ろから肩を包むように巻き込んでしまっているタイプです。この僧帽 筋の線維が巻き込んだまま固まっているケースが多いです。呼吸が浅くなり、運動すると息切れを起こすと いう人が多いです。

 

⑥首無し型(くびなしがた)

首が肩の中に埋まってしまうというものです。首が埋まる原因として、「僧帽筋などの肩の筋肉に力が入 り、そのまま固くなっている」「頚椎の弯曲(反り、曲がり)が大きい」などがございます。首がないように見えますが、施術をすると首が出てくることがほとんどです。

 

骨盤の角度が姿勢を変える!

猫背を矯正する為に、脊柱や肩だけでなく、必ず行なっていかなければならない部分があります。それは 「骨盤の矯正」です。理由としては、骨盤は身体の重心に当たる部分で、この骨盤の角度がどうなってい るかで重心がずれ、姿勢が乱れてしまうからです。そのため、いくらご自身で背すじだけ伸ばしたとしても、 すぐ元に戻ってしまいます。これはそういう要因があるからです。

骨盤もいろんなゆがみ方がありますが、ここでは簡単に「前に傾いているのか、後ろに傾いているの か?」だけお伝えしたいと思います。

骨盤の角度を見るのに確認ポイントが2カ所あります。それは上前腸骨棘(ASIS)と呼ばれる骨盤前方 の骨の出っ張り部分、上後腸骨棘(PSIS)と呼ばれる骨盤後方の骨の出っ張り部分です。この両方の高 さが同じくらいが理想です。

もしASISの方が低い位置にあるなら、骨盤が前傾していることを示し、PSISの方が低い位置にあるな ら、骨盤が後傾していることを示します。骨盤が前傾しているか後傾しているかは、腰の反り方とお尻をみ れば触らなくても分かります。

骨盤が前傾したときは、たいてい腰椎が前弯(反りが強くなる)します。その分胸椎が出っ張り、猫背に なる度合いが高くなります。お尻は出っ張り大きく見えます。

骨盤が後傾したときは、腰椎がまっすぐかもしくは後弯します。腰椎がまっすぐの場合は胸椎もまっすぐに なる場合が多いのですが、後弯した場合は背中もなだらかな猫背になるケースが多いのです。お尻は「ペ タッ」とした感じになります。

どちらにしても、骨盤位が正しい位置に来るだけで、猫背は矯正しやすくなりますし、直る方向に向かい ます。

また骨盤の矯正位を維持する為に、普段から座る姿勢にも気を遣っておくのもいいでしょう。座る姿勢 は、肛門を真下に向ける座り方です。

 

「形状記憶理論」という考え方

猫背矯正理論の中で切っても切れない理論が存在します。それは「形状記憶理論」というもので す。

ここで言う「形状記憶」というものは、簡単にいうと「潰れたボールが元に戻る」ように、「施術しても元の 悪い状態に戻ろうとする力」です。姿勢についてですが、マッサージやカイロプラクティックなどの施術を行 なったとしても、元の悪い姿勢に戻ろうとする力が必ず働きます。それは「身体が長年の間作られた猫 背の状態を記憶しているから」です。形状記憶をつかさどるものとして、

○ 筋肉の形や靭帯・軟骨などの組織、骨格などの構造的な面

○ 運動感覚や位置覚などの感覚的な面

の2種類があります。

〜長年の猫背姿勢で負担がかかり作られた身体を打開する〜

猫背の状態が続くと、筋肉も靭帯も軟骨も骨格もそれに適応するように変化してきます。長年の蓄積 で作られた「猫背仕様」の身体を本来あるべき状態にするには、ただ姿勢を正すだけでは無理です。まず は姿勢を正すのに必要な筋肉がしっかり機能するように施術を行ないます。猫背の状態で硬まっていた り、働いていない筋肉を目覚めさせることで、関節や脊柱の動きが改善され、自分でも正しい姿勢を無 理なく作れるようにするのです。 ただ「猫背仕様」で作られた筋肉は、組織が変化していることもあります。筋肉ってそもそも普段は柔らか くて使う時に硬くなるのが理想ですが、「猫背仕様」だと常にコチコチに硬まってしまっているのです。組織ま で変化している筋肉は、簡単にはほぐれません。刺身のイカは柔らかいのですが、スルメイカは硬くてなかな か噛めないのと同じ原理です。その為には時間をかけて柔らかい筋肉を作っていく必要があるのです。

 

〜「猫背仕様」の感覚を打破する〜

猫背の状態で日常動作や運動を行なっていると、その姿勢で動かすことが当たり前になってきます。し かも大人はそれを何十年もやっているのですから、「習慣」という言葉を通り越して「文化」になっているわ けです。

あなたの今の悪い姿勢について、実際に鏡を使いながら正しい姿勢に修正すると、「正しい姿勢ってこう なの?」と皆さんビックリされます。また正しい姿勢をとることに対して、違和感が生じていることでしょう。そ れもそのはずで、今まで猫背の姿勢で何年も何十年もやってきたわけですから、それをその場で正そうとす ると、変に緊張したり突っ張ったりするということが生じるはずです。

ただこの感覚を徐々に慣らしていく必要があります。そのためには施術で違和感を取り除きながら、視 覚を用いて「鏡で自分の姿を見て修正する」これを日課にしていくことがとても重要です。

「猫背を治す」ということは、「これらの『形状記憶』というものを打破すること」になります。一見難しそうで すが、時間とともに身体が慣れてきます。

 

姿勢の為のメンタルマネジメント

猫背の人を見てよく言われることというと、「自信がなさそう」ということです。見た目的には背中が丸まっ ていると、何か寂しそうに見えます。

実際ご来院されていた方でこんなことが起きたことがございます。 ある女子高生が首の痛みと自律神経失調でご来院されました。その子は身長が172cm。そう、高くて 目立つのです。それが理由で自然と猫背の状態を自分で作っていたのです。「肩もこるし首も痛いし・・・」 この状況は必然でした。こういう彼女に首の治療をしたり、ましては猫背の施術をしたりしても、その場しの ぎになってしまいます。

ここはメンタル的なブロックを外してあげるのです。何が本当にイヤなのか、それを理解する必要がある のです。

猫背の人は「自信がない」というケースが結構あるのです。なぜ自信 がないのか、何が自信をなくさせているのか、この辺りを一度整理し自己分析をすると、結構スッキリする ものです。「病は気から」という言葉はあながちウソではないのです。

また猫背になると肩こりや首の痛み、頭痛、めまいなどが生じます。俗にいう「不定愁訴」というもので す。これらの症状の構造的な原因は猫背等の姿勢不良が多いのですが、同時に身体の調節機能であ る自律神経も乱れてくるものです。身体の調子が悪くなるとイライラしますが、これは自律神経に乱れが 生じているサインなのです。イライラしたら、いい精神状態ではいられないですよね?

このイライラ感を取り除く為にも施術が必要になってきます。たいてい専門家は施術を行なうことで、スッ キリさせることができます。「自律神経機能検査」において、「猫背矯正」施術前と 1回施術後における自律神経機能の変化をとったグラフがあります。(図参照)施術前に比べて施術後 がかなり落ち着いているのが明らかですよね?

専門家から施術を受けることで、構造だけでなくその調節機能である自律神経も整ってくるのです。そう することで心もいい状態を保つことができるのです。

 

PCを打つ姿勢から考える、本当の姿勢のあり方

最後に姿勢の専門家というより、身体について総合的に見たいと感じています。

なぜそれを考えたのかというと、PCを打つ姿勢から見てです。PCを打つときの背中の丸くなった姿勢、こ れは一般的に悪い姿勢だと言われています。正直な話治療家は、「PCを使っているのですか?PCを打 つ姿勢って良くないですよね?もっと姿勢を正して使ってみて下さい」とアドバイスをしている方が多いので はないでしょうか?

確かにPCを打つ姿勢って、構造的に猫背になり、身体に負担がかかってしまうはずです。これまでお話 ししているように、この姿勢はよくない姿勢と言えます。

ただこれは治療家の一方的な視点からの意見なのです。身体を治す専門家からすると、「PCを打つ 背中の丸くなった姿勢は悪い姿勢」というお話をするでしょう。

しかしここで背すじをまっすぐ伸ばした俗にいう正しい姿勢にしてみて下さい。はたしてこの姿勢でPCが上 手く打てるでしょうか?いい仕事ができると思いますか?

時には画面を食い入るように見つめ、仕事中は一生懸命戦っている人も多いのではないでしょうか?そ うです、PCを使っているとき、仕事に集中しているのです。このとき「野性」が働いているケースが多いの です。本気で仕事をするときって、交感神経が優位に働きます。すると姿勢が前傾姿勢になりま す。野球で守っているとき、サッカーやバスケットボールで相手と対峙するとき、テニスや卓球、バレーボール 等で相手のサーブを待つときなど、スポーツ選手が構えるときって、どんな姿勢でしょうか?たいてい前傾 姿勢ですよね?

PCを打ちながら姿勢を正すことを考えていたら、いい仕事が出来ると思いますか?集中できず、難しい かもしれませんよね?

本物の専門家は、その場で改善することだけでなく、クライアントのおかれている立場、背景まで考えま す。それに対して適切な対策を考え、伝えようと努力するわけです。

では、私はPC作業が多い仕事をしているクライアントに何を伝えていると思いますか?「小休止を多め にとるようにして下さい」と言います。仕事中休憩時間を多めにとるわけにはいきません。他の職場の方 の目があるからです。しかしその場で深呼吸したり、軽く肩を回したりすることはできるはずです。じっとPCを 見ていることでコリ固まった筋肉と気持ちをリラックスさせることは、とても大切なことなのです。その場でやる のが難しければ、「トイレに行く回数を増やして下さい」と伝えます。トイレで鏡を見たりしてリラックスして頂 くのです。

専門家がクライアントに対して考えること、それは「クライアントの立場になってゴールに導 くこと」だと思います。皆様にはそういう専門家と出会って欲しいと思います。