常識とは?

常識は、時代により常に変わっていきます。新しい事実や技術の発見により、今まで信 じていた常識が180度全く違ったものになることもあります。例えば『のどが渇いても水 を飲むな』と20年前は言われていました。しかし今では『運動中の水分補給は十分するよ うに』と言われています。また以前は、野球の投手は試合後に肩を冷やさないように暖め ていました。しかし今では、みんな試合後にはアイシング(水や氷などを用いて局所的に 冷却する)をしています。昔の根性スポーツアニメでは、みんなウサギ跳びをやっていま した。しかし現代では『膝の靭帯を痛めるからやめなさい』とコーチに言われるでしょ う。

このように常識は時代により変化していきます。現在、健康のためには「背筋を伸ば し、胸を張りなさい」と言われています。背筋を伸ばすことが一般常識となり、それが本 当に正しいのか疑うことすらありません。本当にそれが正しいかどうか人体構造学的に照 らし合わせてみると、胸を張る行為が健康のために良いどころか健康を害することがわか りました。すぐには理解してもらえないかもしれませんが、背筋を伸ばし胸を張る姿勢よ り、背中の丸い猫背の方がより自然で理想的な姿勢なのです。

読み進まれていくうちに、猫背の重要性や必要性をご理解していただけると思 います。

1000年前に天動説から地動説にパラダイムシフト(ある時代・集団を支配する考え方 が非連続的・劇的に変化すること。社会の規範や価値観が変わること)が起こったよう に、健康においても、今、常識の転換が起きようとしています。「背筋を伸ばし、胸を張 る」は今までの常識でした。一つの常識が変わると、他の多くの常識も追随して変わって いきます。

「つま先重心、腹式呼吸が健康に良い」も今までの常識でした。しかしつま先重心も腹 式呼吸も、人体構造学が局部的視点から大局的視点に変わることにより、全く正反対な結 論になりました。「腹式呼吸は病人の呼吸方」であり、「つま先重心は足の障害や腰痛肩 こりの元である」と、今まで良いとされてきた健康概念が覆されたのです。これからは 「猫背、踵重心、全身呼吸」が健康の常識になります。現在の常識を覆すことにより、日 本人は今以上に健康的で美しくなるでしょう。

 

どちらが正しい姿勢?

右は20代の日本人男性です。背筋が伸び、バランスが取れているように見えます。足元 から頭上に描かれている黒い重心線は、外踝(そとくるぶし)、大転子(だいてんし:大 腿骨頚の上外側にある突出している部分)、肩峰(けんぼう:鎖骨の外側端との間にある 平面関節)、耳の穴付近を通り理想的に見えます。

姿勢セミナーで質問すると、ほとんどの参加者が右側の日本人男性が良い姿勢だと答え ます。整形外科医でさえ、右の日本人が良い姿勢と答えられました。しかし、人体構造学 的には左のイタリア人女性が理想的な姿勢なのです。答えは、Aのイタリア人女性です。

医師や専門家さえ間違いますから、間違えた人も落胆する必要はありません。これは長 年の習慣により「背筋を伸ばした姿勢が良い」という常識にとらわれたために起こった錯 覚です。

では、実際に理想的な脊椎のイラストと彼らの姿勢を比較してみましょう。

 

理想的な脊椎のカーブ

イタリア人女性の写真の右側のイラストが、理想的な脊椎のカーブです。 頚椎(けいつい:背骨)は前弯(前方に弯曲すること)し胸郭(きょうかく:胸部の骨 格)は後弯(後方に弯曲すること)、腰椎(ようつい:腰にある骨)は後弯しています。 理想的な脊椎のカーブとイタリア人女性の背中の描くカーブを見比べて見ましょう。

理想的な胸椎の後弯の曲がり具合とイタリア人女性の背中のカーブが、非常に近いのが わかると思います。そして、しっかりした頚椎の前弯カーブ、腰椎の前弯カーブも見受け られます。イタリア人女性は理想に近い脊椎のカーブを持っています。言い換えれば理想 的な姿勢であると言えます。

一方、日本人男性は背中が平らで平背となっています。レントゲンを見なくとも、背中 の丸みはなく左側のイラストのような理想的な脊椎のカーブが背中に存在しないのがわか ります。また、腰椎に過剰な前弯カーブがあり、その上に位置する胸椎、頚椎はまったく カーブのない構造となっています。身体を側面から見ると、腰椎から頚椎まで生理的(理 想的)弯曲が全く無いストレートスパインの姿勢となっています。

このカーブのない脊椎では、頚椎、胸椎で重力の分散が行われていないため下部腰椎に 過剰な重力的ストレスがかかります。一見、健康そうで良い姿勢に見える日本人男性は、 長年、慢性の腰痛を患い、左臀部から足にかけて痺れがあります。ちなみに、このイタリ ア人女性は立ち仕事にもかかわらず、いたって健康で、体には何の症状もないそうです。

姿勢セミナーではまず「イタリア人女性と日本人男性、どちらのほうが理想的な姿勢で しょうか?」と尋ねます。最初は、9割の専門家は「日本人男性が理想的な姿勢である」 と答えます。

理想的な脊椎のカーブとイタリア人女性と日本人男性を比べてもらい、これらの構造学 的な説明を聞いた後は、今まで反対意見だったカイロプラクティックや整体の治療家、整 形外科医も、イタリア人女性の丸い猫背の背中のほうが構造学的にも正しく理想的な姿勢だと納得します。構造学的な説明をした後は、反論や納得してもらえなかった人は今まで に一人もいません。 「百聞は一見にしかず」なのです。

 

猫背は体に悪い?

書籍やインターネットで猫背を調べると、その弊害が色々と書いてあります。「猫背に 近い姿勢が健康に良い」という文字が見られるのは、私のホームページやブログか、今ま で私のセミナーを受講していただいた先生方の情報発信だけでしょう。ネットで姿勢の情 報を見ていると「医師、専門家の人たちは姿勢のことをどれだけ知っているのか」と疑問 に思います。ただ単に科学的根拠もなく「周りがみなそう言っているから、そういうこと にしておきましょう」と安易な考えで、常識の書き写しをしているだけのように思えま す。

 

医師が説明した猫背(悪い姿勢はみんな猫背と呼ばれる?)

平背と猫背は対極にあります。平背は胸椎の後弯がない状態です。すなわちまっすぐな 背骨。猫背は胸椎の後弯が過剰な状態です。しかし、平背の人も日本では猫背と呼ばれて しまうのです。例えば、「首猫背」・・・背中は平背でも、顔が前に行っていたら姿勢が 悪いから猫背と呼びましょう。または、「腰猫背」・・・背中は平背でも、腰が曲がって いたら姿勢が悪いから猫背と呼びましょう。あれ??背中が平らでも、日本では、姿勢が 悪いとみんな猫背と呼ばれてしまうのです。私は20年以上姿勢矯正の仕事に携わっていま すが、猫背の人をほとんど見たことがありません。日本人で本物の、猫背の人を見つける のは非常に難しいのです。海外では、猫背のことを、ラウンドバック、平背のことをフラ ットバックと一般的に言います。海外の医療従事者の間では、悪い姿勢はみんな別の名称 で呼ばれ区別されています。日本のように簡略化されていません。脊椎の後弯はカイホー シス(kyohosis)といいます。後弯が過剰な場合はハイパーカイホーシス(HYPER・・・)後 弯が過小な場合はハイポーカイホーシス(HYPO・・・)といいます。脊椎の前弯の事をロ ードーシス(lordosis )といいます。前弯が過剰なことをハイパーロードーシス。前弯が過 小なことをハイポロードーシス。アメリカの医療従事者は、顔が前に出ている人を「頸椎 のロードーシス(前弯)が失われて、カイホーシスになっているね」とか、腰が曲がった人 を「腰椎のロードーシスが失われて、カイホーシスになっているね」と表現します。ちゃ んと姿勢を分析できるのです。しかし、日本の医療従事者は、姿勢が悪いとみんな猫背と 呼んでしまう習慣があります。

それでは、よくある姿勢に関するホームページに掲載されている事例を見てみましょ う。TVの姿勢の特集番組やそのホームページでは、悪い姿勢をすべて猫背と表現してい ます。また、専門医が提供する一般向けのホームページでさえ、悪い姿勢全般のことを猫 背と表現しています。私から見れば「猫背」って「悪い姿勢すべてのことを言うの?」 「悪い姿勢は何でもかんでも猫背ですましてしまっていいのか?」と怒りすら覚えます。 医師の仕事は診断であるはずなのに、これでは結核も肺炎もインフルエンザも、すべて風 邪と言っているようなものです。素人でもそのような診断はできます。また、この姿勢関 係のホームページを運営している医師の解説では胸椎の生理的弯曲(理想的な姿勢=丸い 背中)も、悪い姿勢のように表現されています。 「それでは猫背とはいったいなんでしょうか?」

このホームページの医師の解釈よると・・・ >>猫背は、丸まった背中の頂点の位置の違いによって3タイプに分けられます。

1.首猫背 肩に近い部分が頂点になっています。首猫背による肩こりは、やがて腕や手首の痺れなど 神経障害を引き起こします。

2.真ん中猫背 背中の中央あたりの胸椎の7~8番目が頂点になっており、誰が見ても猫背だとわかりま す。これが癖になると、畳や固い床の上では背中が痛くて仰向けに寝ることができなくなります。

3.腰猫背 正常な人は前弯している胸椎の10番目から腰椎にかけてが、逆に後弯して頂点になってい る状態です。座るとすぐに足を組んだり、あぐらをかいたりする習慣がついている人がな りやすく、腰痛を起こします。

この医者は、上記の3つ全てを猫背と定義しています。3つの姿勢は全く違った姿勢であ り、身体にかかる負担の位置も全く違います。「悪く見える姿勢は、全て猫背という病名 にしておこう」「まあ、誰も反論する人はいないだろう」というくらい、いい加減な「猫 背の定義」です。

「実際に上の3つの中で、構造学的に猫背になりえるのはどれでしょうか?」

答え・・・本物の猫背は2番の「胸椎の7~8番目が頂点」となっているタイプです。しか し、日本人の場合、猫背というほどの過剰な後弯がある人がほとんどいません。1番と3 番は、日本人の場合、猫背どころか、胸椎の後弯がなく、平背の可能性が高いです。

また、ここで問題です。「理想的な胸椎のカーブの頂点は胸椎の何番にあるでしょ う?」

答え・・・「理想的胸椎カーブでは、胸椎の7、8番が胸郭カーブの後弯の頂点です。」

そうです。理想的な生理的弯曲(理想のカーブ)を見ると、胸椎の7番—8番が頂点とな り弯曲しています。素人の方はこのホームページを見て、胸椎の後弯は体に悪いの?と勘 違いするでしょう。知識として背骨にS字カーブが必要で、胸椎は丸くないといけないと 分かっている人でも、生身の人間で少しでも丸い背中を見たら悪い姿勢と判断してしまい ます。 それは素人だけでなく、プロの治療家や医療従事者も長年の間違った姿勢の常識に洗脳さ れ、レントゲンでは正しい判断ができたとしても生身の人間では判断不可能となっていま す。

おそらく、これを書いた医師は、最初のイタリア人女性の姿勢と日本人男性の姿勢を見 比べた場合、日本人男性の姿勢が理想的な姿勢であると豪語するでしょう。また構造学的 な姿勢の解説を聞かない限り、イタリア人女性の姿勢は猫背で悪い姿勢であると批判する でしょう。

一部の勉強不足の医師や治療家が、一般的な常識に流され勘違いしているだけです。胸 椎に適度な後弯は必要なのです。胸椎の後弯が無ければ、頚椎の前弯も発生しません。理 想的な姿勢には猫背方向の丸い背中が必要なのです。

それでは前述の3つの姿勢の1番と3番を解説します。

1番の首猫背は若い女性に多く、胸を張り過ぎた結果、胸郭が後方に行き過ぎ、そのバ ランスをとるために頭部が前に行っている姿勢です。この姿勢は胸椎のカーブは無いに等 しく、猫背どころか平背です。頚椎の前弯も減少します。

3番の腰猫背は高齢者に多く、腰から上体が前傾しています。この腰猫背は過剰な猫背 の姿勢と、猫背のない平背の姿勢に区別されます。これは「腰が曲がった人」と表現すれ ばわかりやすいでしょう。立位では腰椎は前弯が理想的です。しかし、その前弯が損なわ れ前弯すべき腰椎が後弯しています。これは腰部の問題であり胸部の問題ではありませ ん。この姿勢の人の中には上部腰椎の圧迫骨折がある人が多いです。日本人では腰は曲が っていても、胸椎は平背の人が多いのです。

ここで猫背を整理します。胸椎の後弯が過剰なものだけを猫背とします。 しかし、何度も言いますが、日本人には猫背の人はほとんどいません。逆に背筋を伸ばす 矯正よりも猫背方向の意識と姿勢矯正が必要です。あえて「猫背は健康に良 い」と極端に言っています。日本人はもっと脱力した猫背方向の丸い姿勢が必要なので す。

前述のような腰椎や頚椎の構造的問題は猫背から切り離しましょう。この点をしっかり 踏まえていないと「猫背(丸い背中)は姿勢に悪い」という間違った意識は改善されませ ん。猫背(丸い背中)が無ければ、頸椎と腰椎の前弯が生じず、健康的な良い姿勢は作れません。

 

ウィキペディアで猫背を調べると

「脊椎は本来、まっすぐな円柱状の形態をとってはおらず、生理的な弯曲を持っている。 頚椎は前弯(脊椎は正確な円柱よりも前方にはみ出している、前方が弧で後方が弦のカー ブ)、胸椎は後弯(脊椎は正確な円柱よりも後方にはみ出している、前方が弦で後方が弧 のカーブ)、腰椎は再び前弯し、仙骨は後弯に相当するカーブを持っている

『猫背』はこのうち、「胸椎の後弯が生理的な範囲よりも大きく曲がったものであり、円 背ともよばれる。」

とあります。

一般的な解釈では「背が後方に丸く曲がり」という表現では正常な理想的な姿勢も猫背に入ってしまいます。 また「首が前に出た状態」は良い姿勢ではありません。首が前に出た姿勢では、日本人の多くは背中が丸いどこ ろか胸椎のカーブが無い平背になります。これは猫背とは逆の姿勢です。特に若者は背中が平らで、首が前に出 ている人をよく見かけます。

胸椎が後弯しているのが正常というのは、プロの方は誰でも知っています。しかし、「胸椎の後弯の生理的範 囲」すなわち、「理想的な胸椎の後弯の角度」は医者を含め日本人は誰も知りません。そこに問題があります。 どこからどこまでが正常な胸椎の後弯で、どこからが猫背かが誰もわかっていないのです。そのため平背の分類 に入る少し後湾した背中も猫背と呼ばれてしまっているのです。

日本人の思っている「猫背」は正常で理想的な姿勢に近いのです。背中は背骨を頂点と して、肩は前方に入り弯曲になっていなくてはいけません(図B)。日本では「巻き肩」 「前肩」と呼ばれています。日本人には想像につかないぐらい亀のように丸い背中が、実 は理想的な胸椎の後弯です。「あの人は猫背だ」と思っている人が「理想的な胸椎のカー ブ」を持っているのです。またあの人の姿勢は良いと思っている人の姿勢が平背やストレ ートスパインの場合が多いのです(図A)。

猫背には「脊柱後弯症」という唯一の病名があります。これは簡単に言うと猫背のひど い状態のことを言います。「それでは軽い猫背はいいの?」ということになりそうです が、そうです、丸い背中は良いのです。猫背がひどくなり、痛みなどの症状が出れば、 「脊柱後弯症」という病名をつけられるのです。しかし、生理的胸椎の後弯を医師が知ら ず、理想的な胸椎の丸いカーブまで、脊柱後弯症と誤診されるかもしれません。猫背と聞 いただけで不健康で悪いイメージがありますが、日本人がイメージする猫背(丸い背中) はきわめて健康的な背骨の形であり、理想的な姿勢には不可欠なものなのです。

 

構造学的に理想的な背骨のカーブとは?

私が提唱する理想的な脊椎のカーブとは、具体的な数値で示すと、イラストのようになり ます。頚椎の前弯の弧が描く角度は60度、胸椎の後弯も60度、腰椎は再び前弯し60度の角度でS字カーブを描いている背骨の形です。

背骨の弧の角度の測り方を胸椎で説明します。 胸椎の弧の描く角度は、第一胸椎(T-1)の椎体の底辺に沿って前方に直線を引き、第12 胸椎の椎体の上辺に沿って前方に直線を描きます(T-12)。 前方でその線と線が交わってできる角度を測ることで、胸椎の後弯が過小か過剰かまたは 生理的範囲かを判断します。 頸椎と、腰椎の弧の測定も同じように基準の場所を設定して測ります。頚椎と腰椎は前弯 しているので、後方に角度が生まれます。

面白いことに頸椎も胸椎も、腰椎も理想的な角度は60度なのです。 この60度の脊椎のカーブは重力が常にかかる人体の構造には必要なのです。

60度で思い出すのが正三角形です。三角形の内角の合計は180度です。一つの角度が60 度であれば他の2つ角度も60度となります。正三角形は二等辺三角形と比べると、安定し ています。どこから圧を加えても、壊れにくい倒れにくいことが想像できるでしょう。ピ ラミッドやダイヤモンドの結晶なども、正三角形が基本形状をしています。

 

生理的な胸椎のカーブの範疇は?

胸椎の弧の描くカーブは60度が理想です。それではどこまでが生理的な後弯か、数値で示 されたことがありませんでした。生体物理を応用したCBPというアメリカの組織が生理 的後弯の範疇を示しました。胸椎の弧の描く角度が56度から69度までが生理的な範囲 で、正常な姿勢です。胸椎の描く角度が56度よりも小さくなると平背で、ストレートスパ インに近づきます。56度より小さいということは二等辺三角形の形状になり構造的にも、 圧縮力、すなわち重力に対して弱くなります。胸椎の描くカーブが69度以上になると円背 となり、本物の猫背となります。びっくりすることに、数値で示すと日本人はほとんど猫 背がいないことになってしまします。

猫背だといわれてきた人が正常であり、逆に姿勢が良いといわれてきた人が、平背で機 能構造的に異常になるという逆転の現象が起こります。

感覚で姿勢を判断する時代から、数値で判断できる時代がやっとやってきました。猫背 矯正では、理想的な胸椎のカーブの人を平背方向に矯正して、平背の人をもっと平背にす るような矛盾したことが現在でも行われています。マスコミなども、平背の人をもっと平 背にするような姿勢の番組を未だににやっています。感覚を数値化することでやっと日本 人が理想的な姿勢へと導かれる道筋ができました。

 

猫背の弊害

よく言われている「猫背の弊害」が別のホームページに掲載してありましたので、それ を検証してみましょう。

「猫背は体の疲れが取れにくい」・・ウソ、ホント?

従来の考え・・・ 猫背の人は胸郭(胸を囲う所)が狭く下がっています。その中に肺が 入っていますが、圧迫されるので呼吸が浅くなります。呼吸が浅いということは、全身の 疲労が取れにくいということです。

私の反論・・・・ 実は猫背のほうが呼吸は深いのです。現代人は息を吐き出すことが 不得意です。猫背の状態は、胸郭内が陽圧となり息を吸いやすい状態になります。肺胞内 が押しつぶされて残気量が減ります。肺胞に伸び代ができ、一回換気量が増えます。例え ば、膨らんだ風船よりも、萎んだ風船のほうが、多くの空気を入れることができるのと同 じなのです。

呼吸筋を最小限で抑えて、エネルギー消費の少ない呼吸ができます。胸を張っている状態 (ピンクの肋骨)では、胸郭内の圧が低くなります。すでに胸郭は膨張しているので、重 力に逆らい肩を上げたり、過剰に呼吸筋を使い胸を拡張させたりしないと、息が吸えない 状態になります。重力に逆らい呼吸筋を使うため肩こりになりやすいのです。長年臨床を やっていると、背中の丸い人ほど肩こりを患っていない人が多いことに気がつき、最初の 頃はびっくりしました。胸を張っている人ほど、肩こりを患っている人が多いのです。

※ 残気量とは、肺機能の効率の 目安の一つで、肺から空気をはき出したときに肺に残っている気体の量。ヒトの成人で、 1.5リットル程度。 ※ 一回換気量とは、安静時呼吸において出入する空気量、1回換気量は成人男子で約500ミリリットル。

 

「猫背は肩こりが慢性で困ります」うそ?ホント?

従来の考え・・・ 胸郭が下がると耳の下から鎖骨についている胸鎖乳突筋が下に引っ張 られ、頭が前かがみになります。そのため、首やその付け根が凝りやすくなるのです。

私の反論・・・ 胸郭が下がると、胸椎の理想的なカーブが生まれ頚椎に前弯ができま す。首やその付け根の筋肉は大きく緩みます。頸椎の前弯が深くなり胸鎖乳突筋は首が短 くなった分だけ、緩みます。(イラスト参照)しかし、背中の丸い人の首が長く見えるの は、なで肩で、肩が下がっているからです。西洋画によくあるモナリザや浮世絵にある芸 者も胸郭が下がっているために、首が長く見えます。しかし、彼女らは現代人よりも肩こ りは少なかったでしょう。また、背中を丸くし脱力しているために、起立筋などの背中の 筋群も緩んでいます。逆に、背筋を伸ばした姿勢は背筋筋群が収縮し、大胸筋などの前の 筋肉は伸ばされ、背中の筋肉も前の筋肉も緊張している状態です。背筋を伸ばしたまま前 かがみになると、体幹の筋肉が緊張しているため、首周辺の筋肉に過剰な負担が掛かりま す。これが肩こりの原因です。

 

「猫背は胃腸の調子が良くない」うそ?ほんと?

従来の考え…胸郭が下がると、胃も下に押し下げられ、胃下垂気味になります。結果的に 胃腸の働きが悪くなります。

私の反論・・・ 胸郭の位置が下がったほうが、胃腸の調子は良くなります。腹部に圧 が加わることにより血管が拡張し、血流が良くなります。逆に、胸を張ると血管が伸張さ れ血管が細くなり、血流が悪くなります。また、背筋を伸ばすと交感神経優位になり、内 臓の血流が悪くなります。胃下垂の原因は猫背ではなく、背筋を伸ばすことにより骨盤と 胸郭の距離が離れているため胃が下垂しやすくなっているからです。逆に猫背では胃は腸 と接近しているために下がる余地がありません。

 

「猫背は太りやすい体質です」うそ?ホント?

従来の考え・・・胸郭が狭く肺活量が少なくなると、ちょっと運動しても息があがりま す。体への酸素供給量が少なくなるので代謝が下がってしまうのです。

私の反論・・・・ 猫背の人は、痩せている人が多く、逆に胸を張っている人のほうが太っている人が多いの です。猫背の人のほうが呼吸時には、胸郭の収縮拡張の動きが大きいので基礎代謝が高いのです。

 

「猫背は偏頭痛になりやすい」ウソ?ホント?

従来の考え・・首の骨と骨の間が狭くなり、首が窮屈に感じます。頭と首の付け根の間も狭くなるため、その部 分が圧迫され頭が重く感じ偏頭痛になりやすいのです。

私の反論…頭部への血流が悪くなると、頭が重く感じるなど、片頭痛を起こしやすくなります。また首周辺の 筋肉が硬くなっても、片頭痛が起こりやすくなります。胸を張り背筋を伸ばした状態であれば、頚椎の前弯はな くなり、まっすぐな頚椎の形(ストレートネック)となります。初期は骨と骨の間が広く首が長く見えますが、 老化とともに下部頸椎に負担がかかり、骨と骨の間、すなわち椎間板が狭くなります。頚椎症や圧迫骨折が起こ りやすくなります。猫背の場合は、頚椎のカーブは前弯を描いており一箇所の椎間板に負担が掛かりににくくな っている、きわめて正常で健康的な姿勢です。

 

私の猫背への道のり、猫背で肩こり、腰痛が消える

私自身治療家でありながら、腰痛と肩こりに長年悩まされていました。私は幼少の頃か ら姿勢が良いと言われ、褒められると、なおさら背筋を伸ばし胸を張って、大人の気を惹 こうとしていました。

もちろん猫背とは無縁で、姿勢が良いと自覚していました。ところが、私が20代前半の 頃、アメリカで全身のレントゲンを撮った時に初めて、自分の脊椎にS字カーブが無いこ とに気がつきました。頚椎の前弯も胸椎の後弯も無く、横から見てもまっすぐの姿勢でし た。そして腰椎、仙骨には過剰なカーブがありました。私の姿勢は典型的な、日本人の言 う「良い姿勢」、背筋を伸ばし、胸を張った姿勢でした。カイロ学生時代の未熟な私に は、「完全なストレートスパインだね」とDRに言われても、半信半疑でした。

アメリカのカイロプラクティックの学生時代だったころ、姿勢にはあまり興味がありま せんでした。アメリカのカイロの勉強はレントゲン映像が中心で、生身の人間を診て治療 するより、レントゲンを診て、背骨の歪みを分析することが主でした。日本の整形外科と 同じように映像診断が中心でした。また、全体の歪みよりも、一個の背骨がずれることが 体に悪いという教育がされていました。なぜなら「一つの背骨がゆがむことが、神経を圧 迫し、自然治癒力を低下させる。」・・という局所的な考え方である「サブラキセーショ ン」をアメリカのカイロプラクティックの学校では、哲学として教えていたからです。今 は逆に、一個の背骨のずれは重要ではなく、全体的な歪みを診ることが大切だと痛感して います。

私自身も 日本で開業してからも、患者さんには、背筋を伸ばし胸を張ることを指導して いました。当時、胸を張るようなストレッチ法を患者さんに指導していたかと思うと、今 では恥ずかしく思います。

学生時代の課外授業では最新のCBPという3Dのカイロプラクティックを学んでいまし た。そのテクニックは革命的で、カイロプラクティックに生体物理学を取り入れており、 科学的根拠を重視していました。その影響で、局所的に人体を診る従来のカイロプラクテ ィックは間違っていると肌で感じていました。そして、脊椎一つの歪みよりも、人体全体 の歪みを診る習慣ができました。また生体物理学を学んだことで「猫背の悪いイメージ」 を覆すための基礎と理論が構築されました。

卒業し帰国した後は、いろんな日本古来の整体を学ぶことで、一つの背骨よりも、全体 の姿勢を診る重要性を再認識しました。日本での新しい発見は、座位でも「背中が丸い」 のが理想的な姿勢だということでした。古武道をされる先生に整体の指導をいただいた 時、「座るときに、こんなに背中を丸くしていいのか」と最初は驚きました。この時に は、まだ、私の中ではこれは受け入れられない事実でした。この頃は古武道が見直されて おり、脱力や効率的な体の使い方がスポーツ界で持てはやされていました。しかし、古武 道の先生は感覚ではわかっていたとは思いますが、表だっては「猫背が良いということ」 を世の中に出していません。

私が猫背の重要性に気がついたのは、アメリカから日本に帰ってきて2、3年後でした。

セミナーで、カナダやイタリアに行って、海外の人の姿勢や所作、生活習慣全体を観察す ることができ、日本の常識の矛盾に気づきました。やはり、アメリカで生体物理を学んだ 後、日本古来の整体を学んだために、今まで見えてなかったものが見え始めました。

 

猫背矯正や姿勢矯正の現実とは

日本人の9割は平背、ストレートスパインです。「私は猫背かもしれない??」と思わ れている人も、ほとんどの人は、平背か理想に近い丸い背中です。猫背矯正に行くと平背 の人も、猫背と判断され、平らな背中がもっと平らになります。平背がなおさら平背に悪 化するのです。理想的なきれいなカーブの背骨の人も、平背方向に矯正されます。わざわ ざお金を払って、不健康で機能構造的に悪い方向の平背へ矯正してもらっています。日本 には適切に姿勢を分析する人がいない事に気づき、機能、構造的に3次元以上で姿勢を診 ることのできる4DSの姿勢分析師を育て、世に広めなければならない」こと決意したので す。

※ 4DS姿勢分析師とは…生体物理学を基礎として学び、人体の機能構造を最先端の知識で分析し、理想的な姿勢を指導する資格を持つプロフェッショナルです。

 

ストレートネックがレントゲンなしでもわかる道具

私が姿勢セミナーを全国各地で開催したとき、多くのプロの方が、平背と猫背の判断が できない現実を目のあたりにしました。日本では、背筋を伸ばし胸を張るという姿勢の常 識により、素人もプロも、レントゲンを撮らない限り、「ストレートスパインかストレー トネックか」の判断が困難だということに気がつきました。従来からの姿勢の常識に感化 されて、生身の人間の外観では姿勢を正しく評価できなくなっているのです。唯一、レン トゲンだけが姿勢や背骨のS字カーブを診断する道具でした。

私自身もここ最近で、やっ と生身の人間の姿勢を外観だけで判断できるようになりました。それは、姿勢分析用のテ ンプレート(定規)を開発してからです。このテンプレートを使うと、「あなたが本当に 猫背か?」または、「あなたがストレートスパインか?ストレートネックか?」レントゲ ンを使わずに判断することができます。また「理想的なS字カーブからどのくらい乖離し ているか」「あなたは本当に猫背なのか」「姿勢が良いといわれているあなたは、実はス トレートスパインで背中をもっと丸くしたほうがいいのではないか」明確にわかります。

また胸椎のどの部分に深いカーブが必要か、頚椎はストレートネックか?腰椎は本当に反 り腰なのか?など・・ このテンプレートを使うことで、今まで気づかなかったこと、わからなかったことがわか りだしました。

 

レントゲンなしで、姿勢を分析する4DSテンプレートの使い方

自在定規(曲線も図れる定規)で背中(胸椎)のカーブを測ります。背骨の棘突起の部分に、自在定規を乗 せ、背骨のカーブに合わせて、自在定規を曲げていきます。

胸椎の一番の椎体の下辺から、胸椎12番の椎体の上辺までの位置の長さと背骨が描くカーブを自在定規で形ど ります。横から見た姿勢のレントゲンで撮った背骨のカーブとほとんど変わりない、カーブが自在定規に形状記 憶されます。 その形状記憶された自在定規を4DSの胸椎後弯のテンプレートの上に載せます。胸椎後弯テンプレートには、矢 状面(横から見た姿勢)の理想的なカーブがサイズごとに描かれています。胸椎の長さを図って、その上端と下 端が合う位置に合わせます。適切な位置にその自由定規を置くと、その人の背骨のカーブが理想的なカーブか ら、どのくらい乖離しているかわかります。

面白いことに、昔から猫背と言われていた人が正常な胸椎のカーブでした。逆に昔から 姿勢が良いと言われていた人が、平背で胸椎のカーブが足りないことが、わかるようにな りました。今までの姿勢分析は、感覚だけで行われており、間違った方向に矯正されてい たことが明らかになってきました。ほとんどの場合、平背をもっと平背に、理想的な背中のカーブも平背にしていたのです。

このテンプレートのおかげで、姿勢矯正の基準ができ、無駄な猫背矯正を防ぐことが可 能になりました。日本人はもっと脱力し、背中を丸くしなければなりません。日本人の背 中は丸くすればするほど、悪い姿勢どころか、理想的な姿勢に近づくのです。

写真のように立位の時だけでなく、うつ伏せの時も、 理想的なS字カーブは首は凹 で、背中は丸く凸 、で腰は凹 、おしりは凸です。素人向けのセミナーなどで「背中が丸 くていいのですか。知らなかった。」..・・と素人の人が言われるが・・・・。プロの方 も「こんなに背中が丸くていいのですか」・・・・と言われる。これが猫背矯正のプロの 現状なのです。丸い背中の人を平背にするような猫背矯正のビフォーアフターの写真を自 分のホームページに載せると恥ずかしい時代が、もう目の前に来ています。

 

イタリア人の姿勢

カナダのケベックで開催されたセミナーに何度か訪れましたが、ケベックはフランス語 圏であるため英語圏とは全く違う白人が住んでいます。男性は180cm以上、女性も170cm 以上のスーパーモデル並みの美男美女ばかりです。バスの運転手でさえも、モデル並みの 美女なのです。そんなカナダの美男美女たちを観察すると、みんな猫背なのです。背中が 丸く、なで肩です。やはり、美しさにも猫背が不可欠であることを確信しました。

猫背の研究が口実となりイタリアに行く機会が増え、自分を大切にし自然体で生きてい るイタリア人たちの日常生活に触れることができました。イタリア人は、座り方から立ち 方まで、行動の全てにおいて効率的で自然です。ところが日本人の動きは、力みがあり常 に肩や背中に力が入っているように見えました。

日本人は周りに影響されやすく流行り物が好きで、ブランド志向が強い傾向にありま す。ファションでも同じ流行を追いかけがちです。食べ物に関しても、TVで納豆が健康 に良いと放送されれば、翌日のスーパーでは納豆が売り切れになります。姿勢に関しても 同じような傾向を示します。マスコミが背筋を伸ばし、胸を張るのが健康に良いと放送す れば、日本全国、みんな背筋を伸ばし、胸を張るのです。これが現在の日本人がみんな、 背筋を伸ばし、胸を張る姿勢をしている原因となっています。その習慣により、歩き方か ら動き方まで不自然で、滑稽な動きになってしまっているのです。

逆に考えると、マスコミが「実は猫背のほうが健康に良い」と放送したら、明日から日 本人の大半の人が猫背になるのかもしれません。

イタリア人に整形学的テストや可動域テストをしたところ、約8割は良い結果でした。 日本人では8割の人に悪い結果がでます。イタリア人を観察することで、自然な座り方、 立ち方を見つけ出しました。明らかに効率的な座り方、立ち方であり見た目も美しいので す。

彼らはブティックで働いている典型的なイタリア人で、私が特別に良い姿勢の人を選ん だわけではありません。

私は長年アメリカに住んでいましたが、アメリカ人に対して姿勢が良いという印象を持 ったことはありません。カイロプラクティックの学校に通っていましたが、その頃はレン トゲンに写る背骨に興味はあっても、生身の人間の姿勢にあまり興味がなかったためだと 思います。アメリカ人は車社会で歩くことが少なく、肥満も多いため、姿勢を見て綺麗だ と思う人はまれでした。また、アメリカ人の中でも健康的であると言われる人は、ジムで 筋肉トレーニングをする人が多く、偏った筋肉のつけ方をしています。トレーニングをす ることで、かえって腰痛や肩こりに見舞われる人が非常に多いです。また、一般庶民でも 幅広くジムに通う傾向があり、ジム人口もイタリアと比べると格段に多いです。ジムに行 く人が少ないイタリア人は、余計な肥大した筋肉をつける人も少ないのです。

イタリアは「立つ文化」であると言えます。カフェに入っても、バーに入っても立って 飲み食いし、陽気に話しています。ミラノ駅に行っても座るところが少なく、ほとんどの 人が立っています。日本とは大違いです。イタリアでは、でこぼこした石畳の道が多く、 日本の生活と比べると足腰に大きな負担がかかる国です。

先進国の中でも、イタリア人の姿勢は歩くこと、立つことに優れている効率的な姿勢で す。多くのイタリア人に共通することは、「背中が丸い」という事です。猫背であって も、かっこ悪くはありません。それどころか、かっこいいし、綺麗です。猫背のイタリア 人と比べれば、平背の日本人は逆に貧相に見えます。

それでは、イタリア人と日本人の姿勢の根本的な違いはどこにあるのでしょうか?比較 してみましょう。

 

イタリア人と日本人の根本的な違いは?

イタリア人の一般的な印象は自己中心的で、高飛車に見えます。そして、想像力が豊か で、おしゃれです。実際に姿勢から受ける印象も、ゆったり、のんびり、やわらかく見え ます。

胸は張っておらず背中は丸く、なぜかいつも笑顔です。力みのないリラックスした感じ を受けます。私たちが実際のイタリア人を見ても、猫背で見栄えが悪い姿勢だとは感じな いでしょう。実際は猫背なのですが姿勢が非常に良く見えます。そして、この写真のイタ リア人達は、肩こりも腰痛などの症状もないのです。

逆に日本人は、兵隊のように堅苦しく、写真で見ても忙しそうに見えます。そして彼ら 日本人に共通しているところは、胸を張って、身体全体が前傾しているところです。彼ら の姿勢は、日本では一般的に良い姿勢であると言われています。しかし、私から見ると 「なんと緊張した、不効率で悪い姿勢だろうか」という印象です。

まず、重心線を見てください。理想的な姿勢は、人体を横から見た重心線が足の外踝を 通り、大転子、肩峰、耳の穴を通ります。

そして、頭部と重心線の位置関係を見てください。イタリア人の重心線は頭の中心近く を通っていますが、日本人の重心線は頭部の後方にあります。右の日本人は、重心線が、 頭部よりも、ずいぶん後方へ位置しています。また日本人は胸を張っているにもかかわら ず、重心線が肩峰の後方にあります。

これら重心線の位置の違いは何を意味するのでしょうか?

イタリア人は重心線上に全身が立っています。しかし、日本人は重心線から離れて、ず いぶんと前に立つ前傾姿勢をしているのです。重心線が身体の中心を通っているときは、 前後のバランスが取れ、筋肉への負担が少ない効率の良い姿勢です。鉛筆を平らなところに立てると、真下に重心が来て何の支えもなく立ちます。姿勢も、重心線上に身体が位置 すれば、余計な力を必要とせず、効率良く立つことができます。鉛筆を立てるのも身体を 立てるのも同じ原理です。重心線からはずれるとバランスが悪くなり、重心を整えようと するため一部の筋肉に余計な負担がかかります。

 

日本人はつま先重心

狭い日本そんなに急いでどこに行くのでしょうか?日本人の姿勢とイタリア人の姿勢を 比べるとそう感じます。日本人の姿勢は前に前傾し今にも倒れそうです。私は、日本人の 姿勢を『神風特攻隊』と呼んでいます。神風特攻隊の姿勢では、ハムストリング(腿の後 方の筋肉)をはじめとして、背部の筋肉が常にストレッチされ緊張状態になります。緊張 は脚を伝わり背部にも伝わります。血液の循環を悪化させ、肩こり、腰痛の原因となりま す。

写真の2人の日本人は左右ふくらはぎに痛みがあり、常に腰痛を抱えています。また、 つま先重心では、体の動きも非常にぎこちなく、心まで緊張状態になりやすいのです。

彼らの意識を踵重心にしてからは、ふくらはぎのツッパリは改善しました。姿勢という のは単なる物理です。前傾し引っ張られすぎた後の筋肉をニュートラルな位置に戻すと筋 肉の負担は減り、症状は改善します。

 

つま先重心は体に悪い

何を好んで、戦後になっても神風特攻隊をしているのか?と思います。日本では、「つ ま先重心が体に良い姿勢だ。」という間違った意識が長年に渡り続いています。

数十年前、踵のない靴やスリッパが流行りました。これもつま先重心が体に良いという 勘違いから開発された商品です。現在でも、主婦や若い女性の方が、健康やダイエットの ために、つま先立ちで家事をしたり、歩いたりしています。それは健康に良いどころか、 自分自身の体を痛めつけ、姿勢やスタイルを悪くさせているだけの体に悪い健康グッズな のです。

慢性の腰痛、坐骨神経痛、冷え性、静脈瘤の症状で私の治療院に来られる患者さんで、 つま先立ちで運動をされている方には、即座に、つま先立ちをやめてもらいます。それだ けで、長年の症状が改善される患者さんが多いのです。いくら良い治療をしても、家で症状を悪化させるような行動をされては、治るものも治りません。

患者さんは、マスコミや医師から良いという情報を聞き、症状改善のために、つま先立 ちでがんばっています。実はその行為が症状の原因でもあり、身体の持つ自然治癒を妨げ ていることに気がついていません。

 

バレエは見せるためのものであり、健康のためのものではない

それではなぜ、つま先重心が、健康に良いと勘違いされたのでしょうか?

実はバレエの踊りや体操などショー的なスポーツの影響なのです。ショー的なスポーツ は、大きく、美しく表現する必要があります。日常的な表現では誰も感動したり、感銘を 受けたりしません。また、バレエなどを見ていると不自然なくらい滑稽な動きがありま す。非日常的な動きこそ人々の関心を寄せるのです。しかし、大きく、美しく表現するこ とが、本当に健康に良いことなのでしょうか?

オスの孔雀が求愛するときに、羽を全開し、メスの注目を集めようとします。しかし、 それは数分のポーズです。また猫が相手を脅すために毛を逆立てるのも危機を感じたとき だけです。普段は、孔雀も猫も効率の良い動きを自然にします。もし、孔雀が、長時間羽 を広げたままでいれば、身体に過度の負荷がかかり早死にするでしょう。

人間も動物も、自分自身を大きく見せようとするときには交感神経が優位になります。 一時的な交感神経の優位は、健康に害を及ぼしませんが、それが長期間続くと交感神経に 亢進が起こり、抹消の血流が悪化します。そこで慢性の腰痛や肩こりなどの不定愁訴が起 こります。

※ 不定愁訴(ふていしゅうそ)とは、「頭が痛い」「イライラする」「疲労感が取れない」「よく眠れない」

など、なんとなく体調が悪いという自覚症状。

つま先立ちをするという行為だけでなく、背筋を伸ばし、胸を張るという行為も、自分 を大きく見せる行為に当たります。胸を張る行為は脱力するどころか、過剰な力が身体に 加わっています。孔雀が羽を広げるのと同じように、大胸筋を広げるので、これを日常的 に続けると不定愁訴の原因となり健康を害するのです。

 

一流のバレリーナの背中は猫背

世界各国を渡り歩いたバレリーナの方から話を聞く機会がありました。バレエにも多く の流派があり、それぞれに主義、主張があります。しかし、一番美しいバレエはひとつし かないそうです。美しいとは、力みがなく、効率的だということだそうです。

バレリーナは背筋をのばし、胸を張っているイメージがあります。首が長く頚椎の前弯 もないストレートネックのようなイメージです。しかし、一流のバレリーナの背中は猫背 であり、理想に近い胸椎のカーブ、頚椎のカーブがあります。

バレエの基本動作には『プレ』というのがあります。両手を前に出し、輪を描く。二 流・三流のバレリーナはそのときに胸を張ってしまうそうです。日本の二流・三流のバレ エの教師は胸を張るように指導します。しかし、一流のバレエ教師は、腕と胸で弧を描く ように指導します。つまり胸を張る姿勢と逆の動作を教えるのです。一流のバレリーナは 胸が奥に入り綺麗な弧を描き背中も丸く弧を描いています。やさしさや、やわらかさ、悲 しみを表現するのにとても重要な動きです。一流のバレリーナは、強弱を体で表現できま す、二流・三流は強さの表現方法しか学んでいません。

 

バレエの美しさは変化から生まれる

物事は、陰陽、強弱、裏表など二面性を持っています。バレエの動作も、陰から陽へ、 陽から陰への変化を表現しなければなりません。人は悲しいときもあれば、嬉しい時もあ ります、怒っている時もあります。一つの劇の中で、人の人生、喜怒哀楽を表現していか なければなりません。バレエでは明るい音楽にのせて踊る派手な動きが目立ってしまいま すが、そのときは手を広げ胸を張って飛び回っています。肉体的には、躍動感のある交感 神経優位な動きをしています。

しかし、悲しい音楽のときにはやわらかい、しなびた感じの暗い副交感神経優位の動き が必要となります。そのときには背中は丸く、うつむき加減になります。

私たちには、明るい躍動感のある動きが印象的に残りますが、劇全体の中では盛り上が る前の(時間的には少ないが)嵐の前の静けさのようなしなやかな踊りが、この派手な踊 りを引き立てていることを忘れてはいけません。一流のバレリーナはこの地味な踊りが、 非常にうまいため静から動へ移行するとき、一番盛り上がるフィナーレを一段と際立たせ ることができるのです。

 

解剖学的に見る、つま先重心の矛盾

まず、踵の骨(踵骨)の大きさを他の足の骨と比べてみましょう。見ただけでも頑丈そ うであり、他の骨と比べて大きいのがわかります。足の骨は26の骨からできています。前 方にある指骨や中足骨は体重を支えるための構造ではなく、蹴りだすための構造をしてい ます。

楔状骨、船状骨は土踏まずの位置にあるため体重を支えません。7対3の割合で、踵骨に 重心がかかることが理想です。つま先立ちをすると、もちろん100%の体重が、前足にか かるわけですが、前足は体重を支えるだけの機能はもち合わせていません。つま先立ちを 続けることは、健康に良いわけがないのです。前傾姿勢になることで体の他の部分やつま 先自体に負担が加わるのです。

 

原始人はつま先重心ではなかった

日本の生体物理学の先生と踵重心について、議論したことがありました。生体物理の先 生は、自然体はつま先重心であると主張されました。なぜなら、原始人の足跡の化石で は、全てつま先重心に見えるからです。化石では、つま先のほうが深く踵より沈んでいま す。私は反論しました、『先生それは歩行中、移動中だからですよ。蹴る動作の時に、指 先が地面から離れるときは、指先に全重心が移ります。しかし、立位のときは踵加重でし ょう。また、雨の日のなど足場が悪いときには、濡れるのを防ぐためつま先重心になりま す。化石としても残るぐらいなので、原始人は沼地を移動していたのかもしれません?』 納得されたのかどうかわかりませんが、これ以上議論は続きませんでした。

勘違いを生んだつま先重心説の謎

結論から先に言いますと、足の裏全体で立つのが理想です。フットプリンターで、足型 を取ると、足の裏への体重の加重具合が大まかに解ります。足の裏に墨を塗って紙の上に 立つ足型のようなものです。理想的な足型は指先5本が黒く写り、土踏まずが写らずに、 踵が黒く写ります。フットプリンターの検査では5本の足の指がしっかりと地面を捉えて いることが理想的な立ち方です。多くの現代人は、指先まで体重が加重されず、黒く写ら ない人や、薄い人が多いのです。特に、親指や、小指が浮いたりする人が非常に多くいま す。

O脚、X脚、外反母趾などの人は指先に十分な荷重がありません。そのデータを観察し た専門家は指先に重心がかからない人は、不健康である。すなわち、つま先重心が理想的 な重心で、健康的であるととんでもない勘違いをしました。

実際、医者も、フットプリンターを使い小学生の足の裏の体重分布を調べた結果、最近 の小学生は、指先に重心がかかっていないことがわかりました。15年前のTVのニュース 番組で「つま先に重心がかかるようにしましょう」という特集があり、そこで医師が勧め たのは「靴を履かずに、裸足で遊びましょう」ということでした。裸足で遊ぶようになっ た小学生は、指先にも体重がかかるようになり、めでたしめでたしという話でした。また ここで、つま先重心の神話が生まれてしまいました。

 

指先を使えるようになったから、踵重心になった

しかし、体重の分配を考えると踵へ7割、後の3割が、つま先という割合で体重を支える のが理想です。「立位での指先の役割は、前に倒れそうになる体を支え、後方に押しや る、すなわち踵重心を助ける役目があります。指先の役割が機能している人ほど、踵重心 であり、逆に指先の機能が失われた人は、つま先重心であるという滑稽な現象が起こりま す。」

極端なつま先重心の人は、主に中足骨に過剰な体重がかかっています。そして指先は反 りあがり、体重がかけられない状態であり、足の指を屈曲するのも困難な状態になりま す。指の付け根にまめができたり、指の根元の側面にブニオン(腱膜瘤と呼ばれるタコの ようなもの)やタコができたりしています。それは過剰な圧が一箇所に集中していること を示しています。また、つま先重心により、中足骨からなる横アーチも、潰され、開張足 (かいちょうそく:足の甲が横に広がり平らになってしまった状態)にもなりやすいので す。踵重心では、偏平足になりにくいのですが、つま先重心では、中足骨の先と、踵の間 の中心点や楔状骨に過剰な体重がかかり、下に落ちやすくなり偏平足の原因となります。

逆に踵重心の人は、指先が自由に動かすことができ、前足の加重も分散されていま す。7割以上の重心が踵にあると、指の付け根や側面にマメやタコができることはありま せん。立位において、つま先や、指先は体重をかけるためのものではなく。前に倒れるこ とを防ぐもの、また、踵で重心を維持するためにサポートするものと考えるべきです。

つま先重心が多くの足の障害、症状を引き起こし、その障害の影響で腰痛や肩こり、そ の他、不定愁訴などの症状を上半身に起こしているといえます。 健康に良かろうと思い意識的につま先重心にしていると、思わぬ症状が身体に現れるでし ょう。 「つま先重心が体に良い、ダイエットに良い」という常識を覆せば、足の障害で悩む人は 少なくなるでしょう。

 

つま先重心は足に障害を起こす

左のイタリア人女性は産後でもあり、通常のイタリア人より少し踵重心です。耳の穴は 重心線より後方に位置しています。過剰な踵重心です。中央は理想的な立位といえます。 右の日本人男性は過剰なつま先重心です。耳の穴は正中線よりも、20cm以上後方に位置 しています。重心線は後頭部にも触れていません。

外反母趾の原因はつま先重心

このようなつま先重心では、足の障害を起こしやすくなります。つま先重心で起こる障 害の代表は偏平足、外反母趾、開張足、巻き爪などがあります。踵加重では、指先は立位 状態で遊んでいます、自由に動かすことができる状態です。その時土踏まずのある舟状骨 にも負担はかかりません。つま先の親指側の中足骨に重心がかかると舟状骨が沈み偏平足 を形成します。

踵加重ではまったく指先には負担はかからず、指先と靴の甲が摩擦する事がなくなりま す。外反母趾はつま先重心により、足全体が前にすべり、常時、親指が靴の内側部に押し 付けられることで起こります。巻き爪も同様な理由で起こります。外反母趾の改善のため に足の指でタオルをたぐりよせる運動などを勧められます。しかし根本的な改善法とはい えません。いまだかつて、あの体操で外反母趾を改善した人を見たことがありません。意 識を踵重心にすることが一番の改善法です。踵重心にすればタオルのたぐりよせ運動をす る必要はありません。

 

猫背は健康に良く、美しい

猫背は日本では長年に渡り悪者にされてきました。猫背は書いて字のごとく猫のように しなやかでやわらかい姿勢なのです。イタリア人のすらっとした美人を見ると、まるで豹 かチーターを思わせるようなしなやかな猫背をしています。日本人のような胸を張った姿 勢をしているイタリア人を見ると、もしかしてこの人は病気ではないだろうかと錯覚をし てしまいます。猫背が自然で理想的な姿勢であり、背筋を伸ばし、胸を張る姿勢は不自然 で緊張した姿勢なのです。ではなぜそのような勘違いが日本では生じたのでしょうか?

まず猫背という定義があいまいで、医者も治療家も、プロといわれる人でさえ何が猫背 で、何が猫背でないか全くわかっていません。

多くの整体やカイロプラクティックでは、理想的な胸椎のカーブを崩す施術をしていま す。すなわち、猫背を平背に矯正し、身体のバランスを崩してしまっています。また医療 関係者やマスコミも、胸を張り背筋を伸ばすようにいまだに指導しています。これは非常 に不健康です。

ではもう一度猫背と胸を張った姿勢のどちらが自然で健康によさそうか見てみましょ う。

左から2人のイタリア人女性は青い線でも、わかるように背中が丸く、多くの医師や治 療家が診ても猫背だと言われます。そしてもし彼女らが日本の整体に行けば、「姿勢が悪 いので背筋を伸ばして下さい!」と指導されるでしょう。

右2人の日本人男性は、背筋が伸びておりプロや一般の人から見ても良い姿勢と言われ ますが、レントゲンを撮ると、胸椎の生理的な後弯のカーブはまったくなく、腰椎から胸 椎、頚椎にかけて、まっすぐな背骨となっています。S字カーブのないストレートスパイ ンです。

下の図のように、理想的な脊椎のカーブは、腰椎の前弯、胸椎の後弯、腰椎の前弯です。真正面から見たときはまっすぐで良いのですが、側面から見たときの背骨はS字の弯 曲を描いています。

それに比べて、イタリア人の女性たちをレントゲン撮影すると、上の左図のような頚椎 の前弯、胸椎の後弯、腰椎の前弯が想像できます。イタリア人女性のようにこのくらい胸 椎に後弯の丸みがないと、理想的な姿勢とは言えません。日本人で猫背といわれている人 が良い姿勢であり、背筋を伸ばした良い姿勢と呼ばれる人が、不健康なストレートスパイ ン(背骨)であるという滑稽なことが、現在の日本では常識となっています。日本でイタ リア人のような丸い猫背の人を見つけるのは、非常に難しいのです。

生まれつきには理想的な姿勢を持っていたとしても、マスコミや医師の間違った情報に より『背筋を伸ばせ』『胸を張れ』が常識となり、理想的な丸い猫背を失います。

 

一流のスポーツ選手は猫背

背の高い外人が椅子に座ったとき、「なんて座高が低いのだろうか」と驚いたことはな いでしょうか。これは座高が低いのではなく、背中が丸い猫背だからなのです。彼らが日 本人のように、背筋を伸ばせば、彼らの座高は倍近く高くなります。

TVのインタビューで水泳のゴールドメダリスト、イワンソープ選手が女子アナと一緒 に座ってインタビューを受けていました。イワンソープ選手は200cm、女子アナは160cm ぐらいでしょう。同じ高さの椅子に座ると何と160cmしかない女子アナのほうが200cmの イワンソープ選手より、座高が高いではありませんか!これはイワンソープ選手の座高が 短いのではなく、明らかに背中が丸まって座高が低くなっているのです。彼は凄い猫背で した。逆に女子アナは、思いっきり背筋をピーンと伸ばしって座っていました。外人は脚 が長いのではなく、座高が低い一番の理由は、背中が猫背だからなのです。

日本人で凄い猫背だと思ったのがサッカーの小野選手です。座ったときに彼が小さくな ること。ほとんどのサッカー選手は凄い猫背をしています。ベッカム、ロナウジーニョ、 ロベルトカルロス、ロナウド、フランス代表のアンリー、挙げたらきりがありません。今 では、メッシ、ネイマールなどが猫背の代表です。テニスプレーヤの錦織圭選手もかなり 猫背です。座ったとき、かなり小さく見えます。あのやわらかさは猫背としか思えませ ん。女子バレーボールの選手もほとんど全員猫背です。木村沙織選手などもすごく猫背 で、巻き肩です。しかしスタイルが良く、健康的に見えます。上手な選手ほど、猫背が凄 い。凄いとは良いということです。背が高いから猫背になったというよりは、猫背でなけ ればあれだけ高い身長にならなかったとも言えます。後で物理学的に説明しましょう。

格闘家も猫背が多いのです。しかし、空手の選手は他の格闘家と比べると、猫背の度合 いが低いです。空手家が自然な猫背であれば、柔軟な動きができ、総合格闘技などでも今 以上に活躍できるでしょう。

丸い背中は柔軟でスピードがある猫やチーターが、すばしっこく動きもやわらかで、スピードがあるように、猫背の人も 例外ではありません。まず、猫背の人は体がやわらかく、肋骨に弾力性があります。ゴム のような感じです。逆に、胸を張っている人は、肋骨、胸郭が硬くなります。一枚岩のよ うな感じです。

サッカーのようなボディーコンタクトの多いスポーツでは、猫背は事故防止のために必 要です。猫背であることで、衝突安全設計を施してある車のように衝撃を吸収して人体への影響を最小限に食い止めることができるからです。

また走ったり、ジャンプしたりする競技にも猫背は不可欠です。胸を張っている状態は バネが伸びきった状態と同じで、胸郭の収縮と伸展をジャンプ力に活かすことができませ ん。猫背であれば、走るときの衝撃の吸収が胸郭で行え、またそれをバネとして、推進力 に結びつけることができます。

 

美しさを競うスポーツにも猫背が必要である

ロシアのシンクロはなぜ強いのでしょうか。そこには猫背の秘密があるのです。日本の シンクロ団体は、なぜかロシアに勝てません。日本の団体としての統一性やミスの少なさ はロシアを凌ぐかもしれません。練習量もロシアよりも多いでしょう。日本とロシアの差 は手足の長さや容姿だとよく言われます。

しかし、日本人は姿勢に問題があるため、表現 力に劣るのです。シンクロは競技といっても身体を使い感情表現する種目です。日本のシ ンクロを見ると極めて機械的な印象を受けます。すばやい手足の動きや一糸乱れないコン ビネーションの動きが硬いのです。それはそれですばらしいのですが何かが足りません。 感情の表現が乏しいのではないかと思います。それに比べロシアは、やわらかさと硬さの 両方を兼ね備え、表現力が豊かです。喜怒哀楽をうまく表現できています。それが美しさ とともに人に感動を与えるのでしょう。

この差はどこにあるのでしょう。日本人は飛び込む前のポーズから、水中での競技中も いつも胸を張っています。インタビューのときに休憩室が映されることがありますが、そ のときでさえ背筋を伸ばし、胸を張っています。

ロシアの選手は飛び込む前のポーズでは背筋を伸ばし、胸を張っていますが、水中で は、胸を張ったり猫背になったりして、身体でうまく感情を表現しています。そして、ロ シアの選手が控え室でインタビューを受けているときは、みんな背中が丸い猫背です。彼 女たちの普段の姿勢は猫背なのです。

日本選手は、普段から胸を張って生活しており、人間本来の丸い自然な背中を持ってい ません。これは人工的に作られたもので、生まれつきではありません。

かたやロシア人は、自然な美しい猫背であり、強い動きも、弱いやわらかい動きも自由 自在に操ることができます。やわらかい動きができるため機械的でなく、しなやかな生物 的な動きができるのです。これは練習量では解決できない課題です。日本人選手は根本的 な姿勢の意識を変えていかなければなりません。

背筋を伸ばし、胸を張ることで良い演技 ができるという日本人の勘違いは、外人のダイナミックな動きを真似て作られたものであ り、実際には外人選手は、最初と最後だけ胸を張り、大きく見せているだけで、演技中は 自然な猫背なのです。日本人選手は強弱の必要な感情表現が下手です。幼少期から関わっ ている指導者の問題でもあり、あえて言うなら日本人の姿勢に対する意識の問題です。正 しい姿勢の在り方を指導者に伝えていかなければなりません。

 

勘違いした日本人の猫背の定義

勘違いされてきた猫背

医師も治療家もマスコミも、いったいどういう状態が理想的な姿勢ということを理解し ていません。それは日本では猫背が明確に定義されてないからです。では猫背とはどうい う状態のことでしょうか。イタリア人のほとんどの人は猫背です。しかし、猫背に見えま せん。逆に姿勢が良く見えます。猫背とは胸椎のカーブが弧を描いていることを言いま す。

日本人が想像する凄い猫背は、猫背ではありません。正確に言うと、胸郭と骨盤の位置 のずれを猫背と呼んでいるのです。骨盤が前方に移動し、胸郭が後に残る組み合わせによ るものです。日本で猫背と呼ばれる人の胸椎のカーブは、理想的なカーブを持つイタリア 人の猫背よりも浅くなっています。また、カーブが全くない平背と呼ばれる人も日本では 猫背と呼ばれています。

上のように、骨盤が重心線上より前方に位置し、胸郭が後方に位置するのです。このよ うな人は猫背だとみんなに指摘され、背筋を伸ばさなくてはいけない、胸を張らなくては いけない、と勘違いをします。このような人が胸を張ると、胸郭がより後方に位置し、そ の結果、バランスをとるために骨盤が前方へずれます。見た目では、猫背が悪化したよう に勘違いされますが、実は自然な猫背が失われ平背になってしまいます。

最終的にはバランスが保てなくなり、腰が折れ曲がり、かがんだ状態で這うような姿勢 になってしまいます。しかし、この人たちは猫背ではなく、平背なのです。平背の人の背 骨は横から見るとまっすぐで、理想的な後弯のカーブがありません。

 

腰が曲がってしまった田舎のおばあちゃんは猫背ではない

最近ではあまり見なくなりましたが、腰が90度曲がり、上体を地面と水平にして歩いて いる老人を昔は良く見ました。昔は、このような老人を見て「姿勢を良くしないと、将来 あのようになるよ!背筋を伸ばし、いつも胸を張りなさい!」と親に注意を受けた人がい るでしょう。そして、腰が曲がった老人たちが、猫背の代表のように思われています。こ の老人たちは腰が丸くなったまま立ち上がれないかと思うと、驚くことに、背筋を伸ばし て立ち上がることができます。「よっこらしょ」とこの人たちが起き上がったときの姿勢 を観察すると、上の絵のように骨盤は前方に位置し、平背の胸椎は後方に並進します。こ の腰の丸い老人たちは、もともと骨盤が前方に位置し、胸郭が後方に位置していた姿勢で あったものと考えられます。その過剰なずれで、バランスが取れなくなり、上体が前方に 倒れこんだ姿勢になったのでしょう。しかし、このようにひどく腰が曲がった人の胸椎の カーブは実は平背が多いのです。猫背の人のほうが少ないのです。

これは何を意味するのでしょうか。骨盤が前方にあり胸郭が後方にある姿勢の人が、姿 勢が悪いと言われ続けたことで胸を張るようになり、なおさら骨盤が前方にいき、胸郭は 後方になってしまい、ずれが大きくなりバランスが取れなくなったのです。そのため腰か ら上体が前方に曲がったのです。または、背筋を伸ばしたストレートスパイン(平背)た め、重力が分散されず、胸椎の12番から胸椎の1番周辺に過剰な圧力が加わり、その周 辺の前方の椎体に圧迫骨折が起こって腰が曲がっている可能性も大きいです。

言い換えれば、この老人たちも胸を張って良い姿勢にしようと努力した結果、前かがみ の姿勢になった犠牲者です。

 

猫背が悪化すると…イタリア人の背骨の老化は?

猫背の悪化は腰が丸くなることだと思われがちでした。実際に猫背が悪化した姿勢は、 胸椎の真ん中から丸くなるような脊椎弯曲症と呼ばれる姿勢です。

イタリアでよく見かけ るのが、猫背が過剰で、顔が前にいった姿勢です。イタリアでは頻繁に見られ、80歳過ぎ の女性に多い症状です。 背の高い高齢の男性なども肩の位置までは若者と同じように姿勢が良く、顔だけが前に行 っています。イタリア人の老化はほとんどがこれに当たります。骨盤は定位置にあり、頭 と首だけが前のめりになっています。

しかし、イタリアでは腰の曲がった老人はほとんど見たことありません。 猫背の多いイタリア人で、腰の曲がった人がいないということは、背筋を伸ばし胸を張っ た姿勢が腰を丸くする原因だと考えられます。

 

日本人イタリア人の老化の違い

日本人とイタリア人は姿勢の老化には大きな違いがあります。イタリアの街中でイタリア人の80歳代の姿勢を 見ると、胸椎の中心、胸椎6番ぐらいに大きい屈曲が起こっています。猫背がひどくなり脊椎弯曲症のような感 じです。これは女性に多い姿勢です。イタリア人の男性の老人は首からの屈曲が多く、胸郭は定位置にあって、 頭だけ前に屈曲しています。

日本の老人は腰椎、股関節から前屈している人が多いのです。腰椎の前弯を失い、上体は前傾し、バランスを とるために骨盤が後方に位置しています。これが悪化すると、股関節から屈曲した腰が90度曲がった老人になり ます。彼らが地面を這うようにして歩くのは、骨盤が前方に行き過ぎたため、歩くにはバランスがとりにくくな り、骨盤の重心をより後ろにもっていかなければならないからです。まるで4脚で歩くサルのような歩き方にな ってしまいます。地面と上体を平行にして歩く腰の曲がった老人は垂直に立つことができます。その人たちが一 度ヨッコラショと立ち上がると、日本人特有の骨盤が前方に並進した姿勢になります。

日本人の老化のスッテプは骨盤が前方へ並進し、バランスをとるのに限界が来ると、足首を支点とし次第に上 体が前方に倒れ、骨盤が後方へ移動し、サルのような歩き方になります。ここまでになる人は最近少なくなって いますが、その前の段階の骨盤が後方に位置し上体が前傾している人は大勢います。

イタリア人と日本人の姿勢の老化による根本的な違いは、イタリア人は立てなくなるまで、2本足で立つ姿勢 ですが、日本人は最後には3つ足で歩くような老化になることです。イタリア人は老化しても骨盤、腰椎は理想 的に位置し、胸椎の6番辺りから屈曲していきます。日本人は股関節から前屈していきます。イタリア人の姿勢 の老化のほうが胸郭まで鉛直線上にあり健康的に見えます。

 

行儀の悪い姿勢は健康に良い『猫背ダイエット』の勧め

『猫背ダイエット』と聞くといかにも怪しく不健康そうなダイエット法に聞こえます。 正しくやれば非常に健康的にスリムになり、同時に肩こりや腰痛までも解消してくれま す。それどころか、内臓疾患まで改善する可能性を秘めています。猫背を正しく意識する だけで、2、3kgのダイエットは簡単です。なかには5kg以上のダイエットに成功した人も います。もともと60kgなら54kgになります。体重の10%減です。猫背になると、実際に 体重が減らなくても、肩幅が狭くなり、首が長くなって、痩せて見えます。

 

太っている人は胸を張っている

「猫背は太りやすい!」…とマスコミや医療従事者が行っていますが、逆なのです。ま ず、みなさんの周りの太っている人を見てみましょう。みなさん堂々と胸を張っている人 が多くないでしょうか。堂々と胸を張りながら、腹を突き出して歩いています。胸を張る と、胸郭は後傾し、お腹を突き出します。そうすると胸郭は前にだけではなく横にも広が ります。胸郭のみぞ内の部分、胃の真上あたりの左右の肋骨弓がなすアングルを胸骨下角 といいます。正常な人で胸骨下角は60度ぐらいです。しかし、胸を堂々と張っている人た ちは、100度以上の角度があります。(イラスト参照)つまり横に広がっているというこ とです。広がっているだけ、食べ物が入り、貯蔵できるわけです。胃も食べれば、食べる ほど横に拡張し、広がっていることが想像できます。

それではなぜ、胸骨下角が広がってしまったのでしょうか。「食べ過ぎたから胃が拡張 し、胸郭を押し広げたのでしょうか」。それも原因の一つかもしれません。誰でも満腹に なったら腹を突き出します。しかし、大食い選手権を見ても、大食いの人は痩せている人 が多いのです。そして、胸郭のアングルは割りと正常に近いです。

答えは、「胸を張った姿勢が良い」という習慣のために、意識的に胸を張ったからなの です。その結果、胸骨下角が広がった可能性が高いのです。胸を張ることにより、前の胸 郭は広がり、下部の胸郭は前に押し出され、強制的に胸骨下角は広がります。これでおい しい食べ物をたくさん食べられるようになりました。ラッキー!と思いがちですが、胸郭 アングルが広がったからといって、たくさん食べられるわけではありません。逆に、あま り食べていなくても基礎代謝が落ちる可能性があります。食事の量は少ないのに、どんど ん太って身につてしまう人は、まずは姿勢から矯正すべきかもしれません。おいしいもの を食べてもいないのに太ってしまうなんて、悔しいですよね。いっぱいおいしいものを食 べても体型を維持できる体になりたいものです。またダイエット時に、食事の量を制限し て痩せようと思っていても、意識的に作った姿勢(胸を張った姿勢)があるので、痩せに くいのです。太って見える形状(姿勢)があるので水を飲んだだけでも太って見えるので す。

それだけならまだ良いのですが、胸を張ると下部胸郭は前方に広がりながら、前に移動 します。お腹を突き出して、胃には十分なスペースができます。これでいっぱいおいしい ものを詰め込めるように見えます。しかし、お腹を突き出したことで内臓がストレッチさ れているため、胃腸の血流がよくありません。内蔵がストレッチされているときはその周 辺血管もストレッチされています。見た目よりも、消化、吸収が悪いので人より間食が多 くなり、食べ続けるため余計に太ります。

 

猫背は太りにくい

正しい猫背の人は、胸を張っている人に比べ肺活量が約10%以上は高いのです。有酸素 系の一流のスポーツ選手は、みんな猫背です。水泳のイワンソープなどは、凄く丸い猫背 を持っています。肺活量が多いことは見ただけでも判ります。持久力を必要とするサッカ ー選手も凄い猫背の人が多いのです。ハーフタイム45分を走り回れる一流のサッカー選手 は猫背でないと、チームの代表に選ばれないでしょう。

まず、胸を張っている人は胸郭がすでに広がった状態です。この状態から息を吸おうと しても、伸びしろがないので胸郭はほとんど広がりません。一方、猫背の人は普段、胸郭 が縮まった状態です。この状態から息を吸うと、伸びしろがあるため、胸を張った状態ま で一気に息が吸えるのです。胸骨下角が60度の猫背の人は130度まで胸郭を広げることが できます。70度も広がります。逆に胸骨下角が120度の人は、140度まで広がるとして も、20度しか胸骨下角は広がりません。胸を張っている人は呼吸が浅くなり深い呼吸がで きません。太っている人が「はーはー」と息遣いが荒いのが想像できますか?? これは胸を張っているので胸郭が広がり呼吸が浅くなっているので、人よりも多く呼吸を しなくてはいけないのです。

風船でたとえると、猫背の人は少量の空気が入った状態から、風船がパンパンになるま で大量の空気が入る。胸を張っている人はすでに空気が半分以上入っているため、少量の 空気で風船がパンパンになります。ちょっと考えれば、どちらのほうが肺活量が多いか一 目瞭然です。猫背の人は常に大量の空気を入れ替えていることになります。胸を張ってい る人は、少量の空気を何回も入れ替えることで、生命を維持することになります。一般的 に言われている浅い呼吸しかできないのです。猫背の人は深い呼吸ができ、一回の呼吸で 大量の空気を出し入れすることができます。

大量の空気が吸えるということは、大量の酸素を補給できるということです。体内の酸 素量が多ければ、代謝が高まり細胞が活発に働くようになります。体内に取り入れられた 脂肪が燃焼しやすくなります。太りにくい体質になるということです。逆に胸を張ってい る人は、少量の酸素しか取り入れることがでないため、細胞の働きも悪く脂肪が燃焼され ません。そのため脂肪が内臓周りに蓄積されやすい体質になります。

 

猫背は新陳代謝を向上させる

新陳代謝とは、身体の中の古い細胞が新しい細胞へと生まれ変わることで、私たちの体 の中の全ての細胞で行われています。新陳代謝を促進するには大量の酸素が必要です。 みなさんが気になる「肌」はもちろんのこと、髪の毛や心臓、肝臓などの内臓から、 骨、筋肉まで、新陳代謝により常に新しい細胞に入れ替わっています。新陳代謝の周期 は、肌が28日、骨が90日、胃腸が5日、筋肉が60日、心臓が22日で、約90日で全ての細胞 が生まれ変わります。若い人ほど新陳代謝の周期は短く、若い人の方が傷が治りやすいの はその理由からです。新陳代謝が良く消費するエネルギーも高いと、汗をかきやすく、血 行が非常に良くなります。

背筋を伸ばし、胸を張っている人が、正しい猫背になり最初に変わるのが、呼吸が深く なり新陳代謝が良くなることです。また、吸収したカロリーも消費されやすくなり、食べ ても太りにくい体質になります。

触診したときに冷たかった手や肩が、猫背に変えることにより暖かくなり、硬かった筋 肉がやわらかくなっていきます。これで脂肪を燃焼させる準備が整い、60日間で肌も筋肉 も脂肪も新しい細胞に入れ替わります。老廃物がたまった細胞が若く新鮮な細胞に生まれ 変わるのです。

新陳代謝が悪くなると

新陳代謝が悪くなると、肩こりや腰痛の慢性痛になりやすくなります。もちろん、肌の 老化が早まり、きめが粗くなります。また内臓疾患になりやすく、むくみの原因になりま す。

猫背になり、深く大きい呼吸をして大量の酸素を取り入れ細胞を活性化させ、新陳代謝 を改善することが必要です。

 

呼吸筋

常に胸を張っている人は、呼吸筋(呼吸を行う筋肉の総称。呼吸をするときに胸郭の拡 大、収縮を行う筋肉のこと。)がストレッチされた状態が維持され硬くなっています。

逆 に、猫背の人の胸郭は呼吸と共に収縮、拡張を繰り返しており柔軟です。正常な猫背で は、呼吸に連動して2、3cmの収縮・拡張を繰り返しています。吸気のときに膨らみ、呼 気のときに収縮します。ところが、胸を張っている人は5mmから10mmの収縮拡張しか 行っていません。全く動きが見られない人もいます。呼吸筋の動きが少なければ、その周 辺筋肉自体への血液循環も悪くなり、いっそう呼吸筋は硬縮して、柔軟な動きを失いま す。

 

猫背は全身で呼吸する

背筋を伸ばし、胸を張った状態では胸郭は開いた状態であり、胸郭の収縮運動は望めません。3秒に一度の呼 吸により、胸郭が収縮運動をすることで、その連動が波のように頭部や骨盤、足手にまで伝わります。

呼吸は肺や腹だけでやっているわけではありません。正常であれば、全身で行われています。新生児の頭頂部 を見れば、呼吸と一緒にやわらかい髪の毛が上下に動いています。小学生や幼稚園児の寝姿を見れば、肩やお尻 が呼吸と連動して動いているのがはっきり判ります。

全身の呼吸の運動は、70歳以上の人にも簡単に見られます。うつ伏せになってもらい、少し胸郭を触ってあげ れば、どんどん呼吸は深くなり、臀部が上下し、頭部もうなずき運動(前後の動き)をはじめます。誰でも簡単 に肉眼で確認できます。

しかし、年齢に関係なく、背筋を伸ばし胸を張っている人は胸郭が硬くなり硬縮しているため、なかなか胸郭 が動きません。呼吸の連動は胸郭で止まっています。ましてや頭部など動くはずもありません。このような人は 胸部だけでなく、首の筋肉、頭皮まで硬くなっています。 またO脚やX脚などで、臀部や下腹部の筋肉に負担がかかっている人は骨盤が呼吸により動いていません。

 

猫背が不健康だと勘違いされた理由

痩せて青白く、うつむきかげんで血を吐いている人は猫背に見えませんか?高杉晋作や新 選組の沖田総司を思い浮かべてしまいます。しかし、江戸時代以前の日本人は全員といっ ていいほど、猫背で前肩だったのです。

肺結核など気胸などで、吸気の時に胸郭が拡張で きなくなると、不健康な猫背になります。現代人の猫背でも、呼吸と連動せずに胸郭が動 かない人は、肩こりや腰痛の原因となります。胸を張って背筋を伸ばしている人も、呼吸 と連動して、胸郭が良く動く人は、腰痛や肩こりになりにくく、呼吸と連動しない人は、 肩こりや腰痛になりやすいです。 しかし、構造的には、胸郭が拡張する伸びしろのある、猫背のほうが健康的で肩こりや腰 痛になりにくいのです。

 

なぜ全身で呼吸ができなくなったのか

幼少の時にはほとんどの人は全身で呼吸ができていました。しかし、小学校に進み「背 筋を伸ばして、胸を張って、姿勢を正せ」と再三言われ、猫背だと注意を受けてきまし た。この小学校からの教育が、背筋を伸ばし、胸を張ることが良いことだという間違った 常識を子供たちに植え付ける原因になりました。

そしてその弊害として、不完全な呼吸し かできない子供たちを育ててしまいました。背筋を伸ばし、胸を張るということは力を入 れるということです。体は硬くなり大きい呼吸はできません。交感神経が優位になり、浅 い呼吸しかできなくなり、全身が呼吸と連動しなくなりました。

 

イタリア人の姿勢教育

イタリアのママ(お母さん)は子供の教育に厳しく口うるさいので有名です。姿勢も厳 しく躾をします。TVを見ているときやゲームをするとき、食事のときなども相当厳しく 注意します。日本と違うところは、イタリアのママは何が正しい姿勢かを伝統的に知って いることです。

子供がTVを見ているときに顔を突きだし、前のめりになっていれば、 『ナチュラレ』と子供をしかります。これは「自然になれ」という意味になります。前に 頭を垂れすぎていると、『ノルマーレ』と怒鳴ります。直訳すると『普通にしなさい』で す。

逆に胸を張って、背筋を伸ばしているときも『ノルマル ナチュラレ』『ノー イレク ト』と注意します。『イレクト』を直訳すると「立ちすぎだ」という意味です。『背筋を 伸ばしすぎだ!胸を張りすぎだ!』ということです。背筋を伸ばせ、胸を張れという注意 はないようです。日本では考えられないことです。

自然の姿勢とは、丸い背で、なで肩で肩に力に入っていない状態のことです。これが本 当の自然体です。モナリザの肩を思い出してください、凄いなで肩で力の入っていないこ とを感じ入られるでしょう。イタリアでは、背筋を伸ばし、胸を張ることは不自然であ り、子供の体のために良くないことを昔から知っています。イタリア人は、自然体が健康 的で美しいことを伝統的に受け継いでいます。

 

自律神経と猫背

背筋を伸ばし、胸を張ると交感神経が優位になります。逆に猫背の状態は、副交感神経 が優位に働きます。自律神経とは、私たちの意志とは無関係に体の働きを調節している神 経です。夜眠っているときにも心臓が止まったり、呼吸が途絶えたりしないのは自律神経 が働いているためです。

「自律神経には、交感神経と副交感神経とがあります。日中は交感神経が優位になって 血管を収縮させ、脈拍が上がり、呼吸数も増え、仕事や勉強に精を出すことができます。 反対に、睡眠時や食事中などは副交感神経が優位になって血管を拡張させ、脈拍をおさ え、呼吸数を減らし、消化を促進します。このように、交感神経と副交感神経がバランス よく働くことで、我々は日々の生活を送っています。交感神経優位だと顆粒球が増え、副 交感神経優位だとリンパ球が増えるのです。

ここで免疫のことに触れましょう。免疫とは体を病気から守るしくみで、主に血液中の 白血球がその役割を担っています。血液中の主な成分は、赤血球、白血球、血小板などが あります。赤血球は酸素や栄養を体の細胞に運ぶ役目をします。血小板は血液を固まりや すくする成分で、血管を修復したり、怪我をしたときのかさぶたとなったりします。

白血球は免疫の主役で、大きく分けて顆粒球、リンパ球、マクロファージがあります。 顆粒球は細菌などサイズが大きな異物を食べて処理し、リンパ球はウイルスやガン細胞と いったサイズの小さな異物にくっついて処理するという具合に、異物の大きさによって役 割が分かれます。マクロファージは処理した異物と顆粒球やリンパ球の死骸を処理する働 きがあります。

ここで大切なのが、顆粒球とリンパ球の割合です。通常は、顆粒球が54~60%、リン パ球が35~41%、マクロファージが約5%となっています。日中と夜間、また季節によっ て割合の変動はありますが、だいたいこの中におさまっていればよいでしょう。

現代人は、ストレスによって交感神経優位の状態が続きやすい環境にあります。例え ば、働きすぎ、心の悩み、痛み止めの長期使用などです。それによって交感神経が優位に なり、顆粒球が増えた状態が続いているのです。

顆粒球の寿命は2~3日で、死ぬとき大量の活性酸素を放出します。体内の活性酸素の7 ~8割は顆粒球が放出したものです。活性酸素はとても大切な働きをしますが、増えすぎ るとその強力な酸化力で臓器や血管などに障害を引き起こします。動脈硬化、ガンといっ た症状や病気の引き金となるのです。加えて、交感神経が緊張状態だとリンパ球が減って おり、ガンに抵抗することができません。」(福田-安保理論より)

このように、胸を張ることにより交感神経が常に優位になり、免疫力は低下し、病気に なりやすくなります。もちろん回復も遅くなります。猫背で、力を抜いて、背中を丸くし た猫背と言われる姿勢では、副交感神経が優位であり免疫力がアップします。

 

なぜ背筋を伸ばす文化が日本で始まったのか

はっきり言って、ただの勘違いによって日本の背筋を伸ばす文化は発達してきました。 明治維新後、その当時の文化人が体の大きな外人を見て、どうやったら小さい日本人が 堂々として見えるようになるのだろうか?と考えた末、背筋を伸ばし、胸を張れば堂々と 見えると勘違いしたのかもしれません。

実際には外人は背筋を伸ばしておらず、胸も張っ ていません。自然な猫背だったのです。まだ明治大正時代は、一般庶民に現代のように姿 勢を良くして健康になろうという意識はほとんど無かったに違いありません。食べること で精一杯です。一般庶民にまでその勘違いが伝わったのは昭和に入り、TV、ラジオが普 及してからではないでしょうか。

実際、日本では、高齢の患者さんほど猫背が綺麗で理想的な姿勢の人が多いのです。猫 背の人は長生きして、逆に背筋を伸ばしていた人は若くして、亡くなっているから高齢で 平背の人が少ないかもしれません。

 

坂本龍馬は猫背だった?

昔の人は、背筋を伸ばしてさぞ姿勢が良かっただろうと勘違いされがちです。特に武士 などは背筋がぴんと伸びた印象がありますが、病気以外の武士はほとんど猫背です。もち ろん、坂本龍馬も、猫背、巻き肩、なで肩です。肖像画を見てもど こか「へにゃっ」とした感じで、まっすぐに堂々とした風格はありません。

これらの猫背 の龍馬の肖像画を見て、「龍馬を美化しすぎでは?」と龍馬の実績までも否定しようとす る人がいます。否定している人は、「坂本龍馬は作家司馬遼太郎が作り上げた人物像のよ うな気がしてなりません。」といっています。 また、肖像画を見た自称武術家の中には、坂本龍馬は剣豪ではなく、武道においては「へ なちょこで、北辰一刀流の免許皆伝を貰っている?」なんて信じられないといわれる人も います。

自称武道家曰く・・・「相手と対峙した時、強い相手はすぐ分かる。とにかくバランス が良い。だから隙がない。素人はバランスが良くないので、動けばすぐ分かる。それと、 免許皆伝クラスになれば、それ相当の練習量 がいるはずだ。少なくとも素振りは毎日千回以上はするはずだ・・・それなりの筋肉が、 肩や胸につくはずだと思う。

写真を見る限り、貧弱な肩と胸で、武道家の肉体ではない。 隙だらけで、武道家として眼の鋭さもない。達人と呼ばれる人は、こんなバランスの悪い 立ち方や座り方は絶対しない。武道の心得のある人や、野球、バスケ、ゴルファー、水泳 選手等スポーツの上級者、一流選手はみんな姿勢や、バランスが良いのです。」 龍馬と は対照的に「新撰組、近藤勇(天然理心流 試衛館道場主)や中岡慎太郎は姿勢もバラン スよく、良い面構えだ」と・・・評価しています。

姿勢のプロから見ると、近藤勇も中岡新太郎も、表情がこわもてだけで、姿勢が硬 直していて柔軟性が不足して見えます。アスリートとしては2,3流で練習しすぎて故障 するタイプのアスリートにしか見えません。力はありますが、柔軟性と持久力のないタイ プです。また、体が固いので、脳の柔軟性も、なかったため龍馬のような奇想天外な発想 も生まれなかったのでしょう。

しかし、実は近藤勇も中岡慎太郎も、猫背、なで肩、巻き 肩であり。理想的な姿勢です。堂々として見えますが、体が固いタイプで柔軟性が肖像画 には見られません。龍馬を現代人のアスリートに例えるならブラジルのサッカー代表のネ イマールではないでしょうか。柔軟性があり、瞬発力、持久力もある。「ふにゃっ」とし た感じがある。過剰な練習しても持ち前の脱力と筋肉の柔らかさで、故障しにくいタイプ です。

龍馬がサッカーをやっていれば日本代表になっていたかもしれません。一昔前なら 龍馬はブルースリーに似ています。ブルースリーは脱いだら細マッチョですが、着物を着 せたら、細身で、龍馬と同じような体形に見えます。龍馬も細マッチョだったでしょう。 龍馬に似た脱力した姿勢を持つ剣豪がいます。それは宮本武蔵です。まず、2刀流とい う新規的な発想、55人切りしたという持久力と瞬発力、宮本武蔵の肖像画を見ても脱力し て体が柔らかいのが伝わります。もちろん、猫背、なで肩、巻き肩です。この絵は晩年の 武蔵で、イタリア人の老化と同じように頭が前に出てきています。一流のスポーツ選手と 同様、強い武将は猫背が深かったことが想像できます。宮本武蔵を剣豪といわない人はい ないでしょう。肖像画を素人が見たら、ただの猫背の爺さんと思うかもしれません。

これらの説明でも、まだ、「坂本龍馬はへなちょこで剣豪ではなかった」と彼らは言い切れるでしょうか?

江戸時代の女性を見るとみんな凄い巻き肩で、なで肩です。浮世絵の女性を見てくださ い。みんな首が長く、背中に丸みがあり、巻き肩です。海外の油絵の女性像も、皆、巻き 肩、猫背、なで肩です。モナリザ然り、欧州の女王様の肖像画も皆、なで肩、猫背です。 フランスのマリーアントワネットも、歴代のイギリス女王も・・・自然体の人間は、国を 超え世界を超えて、巻き肩猫背なのです。

江戸時代の人々の肖像画を見るとみな良い姿勢をしています。まるでイタリア人のよう です。踵重心で、頭、胸郭、骨盤が一直線上にあります。

茶道などでは背筋を伸ばし、胸を張るのが常識だと思われがちです。しかし、茶道の創 始者である千利休は凄いなで肩で猫背です。全く力が入っていないすばらしい自然体で す。なで肩は胸を張っていてはできない姿勢です。茶道の時には「背筋を伸ばし、胸を張 らないといけない」という姿勢は、明治維新以降に勝手に作られた文化に違いありませ ん。

 

兵隊の行進

兵隊の行進を想像してください。手足の関節を伸ばし、ロボットのようなぎこちない動 きを想像されるでしょう。必要以上に手を振り、脚を上げ、みんな整列し、手足をそろ え、わざと着地を強くし、足音を響かせながら、歩いています。自分自身を大きく見せて 敵を威嚇することが目的だからです。猫などの動物が敵を威嚇するとき、毛を逆立て、 『シャーッ』と音を立てながら攻撃態勢に入ります。ゴリラであれば、胸を張り、叫びな がら自分の胸を両手でたたき、相手を威嚇します。

通常、リラックスした猫背の外人たちも、行進などの軍事演習のときだけは背筋を伸ば し、胸を張ります。戦いの時には交感神経が優位になります。交感神経優位の状態では、 瞳孔が開き内臓への血流が減少し、戦いのため筋肉への血流がアップします。苦痛や痛み を感じにくくなり、毛細血管が収縮しているので、皮膚など表面への血流が減少し、万が 一怪我をした場合でも出血が最小限ですむようになります。痛みや、苦痛を感じにくいた めに、過酷な労働や、試練にも耐えることができます。この状態を続けることは、ロボッ トや奴隷と一緒であるといえます。

戦時中には、兵隊だけでなく男女問わず学校でも行進の練習をしました。よく考えると 戦時中でないにもかかわらず、現代でも行進をやっているではありませんか。小学生のと きから、『起立、気をつけ、礼、前へならえ』とやっていたのを思い出します。小、中、 高と12年間も軍隊教育と同じようなことをやっています。高校野球の行進も、兵隊の行進 となんら変わりはありません。これらは軍国主義の名残だったと考えると恐ろしくなりま す。

現在のオリンピックの行進では、みんな列も作らず自由に手を振り行進しています。も はや行進というよりは歩いて入場しています。30年前の日本人の感覚では、このような入 場はだらしないと思うことでしょう。今ではそれが普通に感じるようになりました。

第一次世界大戦時の明治では、英国から軍隊教育を受け入れたばかりで、行進をすると いう習慣は兵隊だけでした。一般市民には全く普及していなかったように思われます。第 二次世界大戦時、日本に敗戦色が強くなった昭和初期ぐらいから、一般市民に対して本格 的に軍事訓練が行われ始めました。女性までも竹やりを持って訓練していた風景を思い出 す方もいらっしゃるでしょう。そして、戦時中には勉強するはずの学生も工場で強制的に 働かされていました。このころに、軍人的な「背筋を伸ばし、胸を張る」という習慣が女 性や子供にも根付いてきたのです。「背筋を伸ばし、胸を張る」という姿勢は軍国主義の 名残であり、人々を奴隷にするための道具なのです。

また「背筋を伸ばし、胸を張る」という姿勢は健康的には何も良いことはなく、現代の 成人病を促進させています。この姿勢は戦うための軍隊の習慣なのです。

背筋を伸ばし、胸を張ると、交感神経系が優位となり、力の入った緊張した状態となり ます。しかも、このストレスがすぐに解消されない場合、交感神経優位の状態が生体で持 続することになり、生体内のホルモン環境も変わってきます。副腎からステロイドホルモ ンが過剰に分泌され、インシュリンの作用がブロックされることで、血糖値が高くなり糖 尿病が起こりやすくなります。交感神経系優位では十分な睡眠もとれません。つまり、世 間で言われている高血圧や糖尿病などの生活習慣病に陥りやすいのです。これに対して副 交感神経系優位では、精神的にリラックスした状態になります。瞳孔は小さくなり、胃液 や唾液の分泌は高まり、血管は拡張し手や足は温かくなります。脈も落ち着き気分も楽になっています。脱力した猫背の副交感神経優位は望ましい状態なのです。

 

資本主義の奴隷

諸外国も同じく戦争を繰り返してきました。しかし、日本人だけが切り替えができない まま軍国主義の名残である姿勢の習慣を続けてきたのです。

この軍国主義的な「背筋を伸ばし、胸を張れ」という姿勢教育は、戦後は産業の発展の ために利用されてきました。戦後の製造業では「安くて、性能の良い商品を大量に作るこ と」が世界的な経済戦争で勝ち残れる手段でした。それには長時間労働を国民に強いるし かありませんでした。そこで痛みや、苦痛を感じにくい奴隷的な姿勢が必要だったので す。戦後の日本人が世界中で一番働いた民族であることは確かです。現在の私たちは、重 労働に耐えてきた父親世代の恩恵にあずかり、物理的に豊かな生活を送ることができてい ます。しかし、時代は変わり、製造業は労働賃金の安い中国へ流れています。労働賃金の 高い日本では、長時間労働はコストアップにつながり中国には太刀打ちできません。長時 間奴隷のように働けば、豊かになるというビジネスモデルは既に破綻しているのです。軍 国主義的な痛みに耐える姿勢は、もはや日本の経済界では必要とされていないのです。

先進国では、上から与えられた仕事をこなすだけでなく、自発的に仕事を作り出してい くような人材が求められています。「背筋を伸ばし、胸を張る姿勢」は国や産業界のニー ズにマッチしていました。しかし、その姿勢は現在では、成人病を増やし医療費を増大さ せるだけで、国益的に何のメリットはありません。胸を張る姿勢は交感神経を優位にし、 高血圧を生みます。そして、死亡率上位の癌、脳梗塞、心筋梗塞へと導きます。また、薬 の消費量は世界でも日本がダントツの1位です。2位のアメリカと比べても2倍も消費量が 多いのです。世界の3分の1の薬が日本で消費されています。さらに、世界市場においては 日本の製薬会社の年間売上高は15位でしかないのです。これは日本での薬消費による利益 のほとんどが海外に吸い取られていることを意味します。胸を張って奴隷のようにして働 いて稼いだお金は、医療費という形で国家の予算を食いつぶし、さらに海外へ流れている のです。

私は、「背筋を伸ばし、胸を張る姿勢」が病気になりやすい悪い姿勢 で、副交感優位な猫背の姿勢が病気になりにくい健康的な姿勢である事を世間に広めてい きたいと考えています。国民の健康を守るため、国益を守るために明治維新前までは普通 だった猫背を普及させたいと思っているのです。

 

背中で呼吸をする

アメリカのカイロプラクティックの学生時代だったころも、まだまだ、猫背を受け入れ られない時期が2、3年ぐらいありました。その後、呼吸にも興味を持ち、様々な人の呼吸 を観察するようになりました。無論、従来の常識にとらわれており腹式呼吸が大切だと思 っていました。しかし、死の床に伏した患者さんを診る機会が多くなり、そういった重篤 な患者さんほど、お腹を上下させる腹式呼吸をしていることに気がついたのです。喉頭 癌、肝臓癌、胃がん、脳梗塞、心筋梗塞、手術後の患者さん、手術前の患者さん、症状に 関係なく、病を患って苦しんでいるみなさんの呼吸は全て腹式呼吸でした。胸が動いてお らず胸式呼吸ができていないのです。

言い換えれば病気の人は全身での呼吸ができていないことに気がついたのです。子供や 健康な成人は全身で呼吸をしています。呼吸のたびに全身に波動が伝わり、手足まで動い ています。横隔膜が上下するたびに全身も波打つのです。

 

アシュタンガヨガに出会う

私が思っていたヨガというのは常に、腹式呼吸を重視するものでした。そのように私も 思っていました。しかし、アシュタンガヨガは腹式呼吸だけでなく胸式呼吸を意識し、胸 郭を収縮し拡張させ、下腹部や腹部も意識するヨガでした。腹式と胸式を組み合わせた呼 吸は「パーフェクト呼吸」といいます。アシュタンガヨガはポージングが難しく激しいと いうので有名です。呼吸に関しては、私にとっては、他のヨガよりも革新的でした。

 

背中で呼吸をする

一時期、猫や犬、人間も含め生物の呼吸を観察するのが癖になりました。あるセミナー で、痩せたベジタリアン風の人を見ていると背中が動いていました。座っていても丸い彼 らの背中は、呼吸と一緒に拡張、収縮していたのです。小食で青白く一見不健康そうに見 える菜食主義者ですが、そのか細い呼吸はエネルギー消費が少なく効率的であり、また全 身を使いスムースに行われていました。

逆に、背筋を伸ばしている人は背中を使って呼吸をしていません。肩を使って呼吸して いるか、胸や腹で呼吸をしているのです。呼吸が大きい人は太った人が多く、胸を張って おり息が荒いのです。燃費の悪い呼吸法です。腹式呼吸の人が多く、背中を使いながら呼 吸する人が少ないのです。

肩で呼吸をしている人は、重力に逆らって呼吸しており、過剰な負担がかかるため肩こ りになりやすいのです。また肩で呼吸をすると、いかり肩になりやすいです。

筋肉が動くということは、そこでポンピング運動が起こり、血流が良くなり筋肉中に老 廃物も溜まりにくくなります。つまり筋肉痛になりにくいのです。

座位で背中が丸く、呼吸と連動して筋肉が動いている人は、背中の血流が良く長時間座 っても肩こりや腰痛になりにくい。逆に、背筋を伸ばして座っている人は重力に逆らって 呼吸します。また呼吸と連動して背中の筋肉が動くことが少ないため、背中の血流が悪 く、肩こり、腰痛になりやすいのです。

実際に私も背中を丸くして座るようになると、肩こりや腰痛もなく、何時間でも座れる ようになりました。以前の私は背筋を伸ばし胸を張っていました。よく姿勢が良いと褒め られていました。しかし、30分座っただけで腰痛に見舞われていたのです。呼吸と丸い背 中の関係を自分の体で実感して初めて、猫背は健康な体に必要であることを確信したので す。

ラジオ体操の深呼吸でも、手を大きく広げて、胸を張って呼吸は胸でします。日本で は、呼吸をするときに胸を広げて息を吸うのが当たり前です。ヨーロッパでは、背中を膨 らませて、背中で呼吸するのが当たり前なのです。日本人は、長年背中で呼吸する習慣が ないので、背中で呼吸することが不得意です。背中で呼吸することを意識してもらって も、全くできない人が非常に多いのです。幼児期は、みんな日本人も背中で呼吸ができて いました。しかし、学校教育などで胸を張り、姿勢を正すことが習慣となり、背中で呼吸 することを日本人は忘れたのです。これは、背筋を伸ばし、胸を張るという習慣がもたら した弊害の一つです。背中で呼吸ができない人は腹で呼吸するか、肩で呼吸をするしかあ りません。腹で呼吸をすると、息を吸うときに下部胸郭を前に突き出し、吐くときに元に 戻します。息を吸うときにお腹を突き出す姿勢となります。胸を突き出す、お腹を突き出 す呼吸法は胸郭の前面部の拡張を進め、老化や肥満の原因となります。

また、肩を上げる呼吸法は、重力に逆らって身体を動かすことになるため、通常の呼吸 よりも筋力を使い、呼吸することで肩こりになります。

背中を丸めてパソコンや勉強をする姿勢では、腹や下部胸郭を突き出してする呼吸は困 難になります。そこで重力に対して、肩を上下する呼吸法をすることになります。その結 果、肩こりや腰痛になってしまいます。この呼吸法では長時間、椅子に座って作業をする ことが困難です。しかし、背中で呼吸をすることができれば、何時間座って作業しても、 肩こりや腰痛になりにくいのです。なぜなら、背中で呼吸をすることで、背中、腰の筋肉 で収縮運動が常に行われるようになり、血管がポンプアップされ、血液の循環リンパの循 環が向上し、老廃物がたまりにくくなるからです。

背中が猫背で丸くても、呼吸と一緒に連動し常に動いているので、肩こり、腰痛とは無 縁となります。何時間も机に向かって座っても、疲れにくく、肩こりや腰痛になりにくい 体ができます。逆に背筋を伸ばし、胸を張っていると、背中の筋肉をはじめ上半身は緊張 し、血流は悪くなり、肩こりや腰痛の原因となります。自律神経的には、胸を張ることは 交感神経が優位になりますので、毛細血管は収縮し、凝りや痛みを感じやすい筋膜周辺の 層が血流不足となるため凝りや痛みを誘発します。

私自身、長年左の慢性腰痛を抱えていました。30分以上椅子に座り、机で作業をする と、左腰が苦るように痛くなっていました。しかし、脱力して背中を丸めるようになって からは、何時間座っても、腰痛知らずになりました。

 

座り方の意識を変える

従来は、背筋を伸ばし、胸を張って椅子に座れば腰痛や肩こりを予防できると思われて いました。しかし、逆に背筋を伸ばして椅子に座ることのほうが、身体の血流を悪くし腰 痛や肩こりの原因を作ります。腰痛や肩こりの予防には、背筋を伸ばさず、胸を張らず、 肩の力を抜いて、椅子に座り作業することが必要なのです。

椅子文化の長いイタリア人な どは常に背中を丸めて座っています。通常はその姿勢で座り、休憩や気分転換のときに、 背筋を伸ばすことが自然な動きとなります。猫などの動物を見ていても普段は丸い猫背で すが、気分転換のときにだけ背筋を伸ばします。

日本人の場合は、常に背筋を伸ばした状 態で過ごしており、休憩や気分転換のときには、なおさらストレッチをします。丸くなる ことはなく、自然なリラックスした状態に戻ることはありません。この意識では、慢性の 肩こりや腰痛は一生消えないでしょう。

 

背筋を伸ばし、胸を張ると機能的障害が起こる

私の治療院に来られる大半の人が一般的に言う背筋を伸ばした「姿勢が良い」と呼ばれ る人たちです。私から見ると気の毒な姿勢の悪い人が多いのです。そういった方々は慢性 の肩こりや腰痛を抱えられています。まずは治療の過程で脊椎の可動域検査をします。

し かし多くの人達は胸椎と腰椎が棒のようになって曲がりません。一つの関節だけではな く3、4個の関節が、屈曲も伸展もできなくなっています。これは肘の関節にたとえる と、160度屈曲できる肘が50度しか屈曲できない状態と同じです。まず、腰を曲げる動作 ができません。だらーっとするような姿勢です。特に背中を丸くすることが全くできない 人が非常に多いです。他動的に力ずくで曲げようと思っても、靭帯が固まっており曲がり ません。

その人たちの中でも、前屈は得意という人もおられますが、上体を前屈する動作 は、股関節から曲がっているだけで、腰椎や、胸椎は連動して曲がっていません。正常な 猫背の人は自分の意思で背筋を伸ばすこともできるし、曲げることもできます。どちらが 健康的で機能的か、すぐ理解できると思います。もちろん猫背のほうです。

 

背筋を伸ばすと現れる腰痛

長年背筋を伸ばしていると脊椎が関節としての役割を失います。脊椎の関節の屈曲、伸 展ができなくなっていることは、本人では見ることができないため、気がつきにくいので す。プロが触診すると胸椎の可動性が背筋を伸ばすことにより、失われていることが頻繁 にあります。日常的な動きの中でも、前屈したり後屈したり回旋することは、素人から見 れば問題なく行えます。なぜなら、いくつかの関節が固まって動かなくても、他の関節が 補正するからです。たとえば、洗面台で前屈して顔を洗うとき、背筋を常に伸ばしている 人は、5つの腰椎関節が動かなくても、股関節を支点として曲げることができます。しか し、その動作を繰り返していると、過大な負担が股関節と、その周辺の筋肉、靭帯にかか ってしまいます。そして、それが原因となり、痛みとして症状が現れてきます。本来なら 一つの動作において複数の関節にまたがってかかる負荷が、一つの関節周辺の靭帯、筋肉 にかかってしまうからです。

正常な動きでは一つひとつの脊椎が支点となり、24個の脊椎関節が全体で屈曲します。 例えば、洗面台で顔を洗う時、通常、股関節は10度の角度の屈曲ですみます。しかし、背 筋を伸ばし、脊椎が固まった状態だと30度の股間の屈曲が必要となります。正常な状態の 倍以上の負担が股関節やその周辺の筋肉にかかっていることになります。このような背筋 を伸ばした人たちは、洗面所などで顔を洗うときに、仙腸関節周辺や下部腰椎に痛みを感 じます。

興味深いことに、背筋を伸ばし姿勢が良いといわれるヨガやエアロビクスの先生にこの 症状を訴える人が多いのです。

体に良い、健康に良いと勘違いされ、みんなの見本となるために、背筋を伸ばした間違 った姿勢を一生懸命意識し体に覚えこませて習慣化してしまった一番の犠牲者です。この ような人たちを次世代から増やさないように、姿勢の常識の転換を図らなければなりませ ん。猫背で脱力した姿勢が良い姿勢です。背筋を伸ばすのは、猫が時々伸びをするよう に、気分転換のときだけで良いのです。

 

あなたの姿勢のタイプはどれ

姿勢は大きく分けて3種類のタイプあります。両極端な2種類の間に正常な理想的な姿勢 があります。生活習慣の違いなどから、その中間には何千種類もの姿勢のタイプができま す。

まず基本的な2種類のタイプは活動的な三流スポーツ選手タイプと行動的でないオタ クタイプです。三流スポーツ選手タイプは骨盤が後方に並進し仙骨が過剰に前傾、お尻の 筋肉が膨張しています。脊椎のカーブが失われ、生理的なS字カーブがありません。これ は三流のスポーツ選手に多く、怪我や故障が多いのが特徴です。一流のスポーツ選手は綺 麗なS字カーブがあり理想的な姿勢に近く、全身の筋バランスが良い状態になります。三 流スポーツ選手は仙骨が過剰に伸展しているため、腰椎の3、4、5番が滑りやすく、すべ り症、脊椎分離症になりやすいのです。また構造が不安定なため、それを補う目的で骨棘 も発生しやすく、左のハムストリング(太もも裏側)の肉離れ、右大腿四頭筋の肉離れに もなりやすいのです。

こうした人は、周りから姿勢が良いと言われますが、本人は慢性の 腰痛に悩まされていることが多いのです。また「背筋を伸ばし、胸を張る姿勢が良い」と いう教えに従い、自ら怪我や故障になりやすい姿勢を作ってしまっているのです。三流ス ポーツ選手タイプの姿勢は、一つの関節に負担がかかりやすく不安定なため、局部的な筋 肉に過剰なストレスがかかり、寝違いやギックリ腰にもなりやすいのです。

オタクタイプの姿勢は、骨盤が前方に移動(並進)しており、骨盤は後傾しています。 お尻は発達しておらず、大腿前面部がストレッチされています。背中は丸く、変形のS字 カーブが描かれています。本来なら過剰な猫背であるはずですが「背筋を伸ばし、胸を張 る」という習慣から、猫背ではなく胸郭全体が骨盤の後方に移動し(並進)その反動で頭 部が前方に移動(並進)しています。それが変形したオタクタイプの姿勢を作り出し、症 状を複雑化し悪化させています。骨盤は後傾にあり、腰椎の生理的な前弯は失われてお り、椎間板に上半身の体重負荷がかかりやすく、圧迫骨折、脊椎変形により脊椎管狭窄症 になりやすい状態です。

この姿勢の人々は活発でないために、骨密度が落ち易く、骨粗し ょう症になりやすいのです。そのため、転んだときなどに大腿骨頚部骨折などを起こしや すいのが特徴です。腰痛を訴える人よりも、肩こり、背中痛、頭痛を訴える人のほうが多 い姿勢のタイプです。このタイプの人は膝を痛めやすく、また四十肩や五十肩にもなりや すいのです。

 

姿勢の治し方(良い姿勢の作り方)

旧式の姿勢矯正法

今主流の姿勢の矯正法は背筋を伸ばし、胸を張る方向です。以前、猫背矯正は整体院が メインでしたが、今は整骨院の保険診療から実費移行化のため、猫背解消にための矯正が 整骨院でも行われています。

しかし、実際は日本人には、猫背の人はほとんど存在せず、 平背をもっと平背にする矯正が行われています。その矯正法では、生理的な弯曲は失わ れ、新たな障害を身体に及ぼし、姿勢の矯正どころか姿勢の悪化につながります。

矯正に よる刺激で一時的には気持ち良いかもしれませんが、機能構造的には間違ったことをして います。95%の人はこの従来の矯正法では姿勢は良くなりません。その人の姿勢に合わせ た矯正方法が必要になります。

 

日本の矯正は頸椎や骨盤を正すために、胸椎の後弯を壊す

背中は胸椎です。腰は腰椎、首は頚椎です。猫背というぐらいなので、背中すなわち胸 椎が丸いということです。胸椎が後弯しているのが正常だということは何度も言いまし た。「あの人は猫背だ、姿勢が悪い」という人を分析すると、背中の部分、胸椎はあまり 悪くないのです。むしろ正常に近い人が多い。姿勢が悪く見えるのは、腰椎と頚椎、すな わち首と腰のカーブが異常なのです。頚椎は前弯を失い、頭が胸郭よりかなり前に位置し ます。また腰椎も前弯を失い、骨盤は胸郭よりずいぶんと前に位置します。背中のカーブ は正常であっても、首と腰の背骨が丸いため身体全体が丸く見えます。これを猫背と表現 しているのでしょう。ちなみに猫には、頚椎の前弯があります。

従来の矯正法は、この正常な胸椎をまっすぐにし、前に出すぎた頭を後方、すなわち胸 郭の上に、何とか真上に載せてしまいましょうというものです。また骨盤も、胸郭の下へ 胸椎を犠牲にしてでも、何とかはめ込みましょう、という浅はかな考えの矯正です。頭部 と胸部、骨盤は一直線上に並びますが、ストレートスパインとなり胸椎のカーブが失われ るだけでなく、脊椎全体のS字カーブが失われます。

 

姿勢の矯正で重要なのは、患者さんの意識変革と継続

姿勢の矯正に強い力が重要だと多くの人は勘違いしています。整体やカイロプラクティ ックで、背骨や関節をボキボキ鳴らすような矯正を受けた事がある人は特にそう思われる でしょう。ボキボキする矯正も有効ですがそれが機能構造的に正しい方向になされている かが問題です。それは知恵の輪を無理やり外すような方法であり、自然な関節の動きを損 なうことも起こりえます。また、多くの先生が理想的な姿勢を知らないので、間違った方 向に、力ずくの矯正をすることになります。

背筋を伸ばし、胸を張る方が良い姿勢だと、親や先生、マスコミから常に言われると、 自分自身が普段から意識してしまい、その姿勢が習慣となります。体に構造的な負担がか かっても、いつしか身体が適応してしまうのです。そして「背筋を伸ばし、胸を張る」と いう意識では、日本人特有の前傾した変な姿勢が出来上がり、理想的な胸椎の後弯も失わ れてしまいます。

姿勢というのは、誰からも矯正されるわけではなく、自分の意識次第で矯正されます。 まずは何が理想的な姿勢なのかということを自分自身で理解し受け入れることが必要で す。そのことを意識し続けることで、姿勢は変わります。

 

受け入れることは難しい

長年、定期的に診ていた患者さんに猫背の必要性を説いても、すぐには受け入れてもら えません。長年背筋を伸ばし胸を張るように指導していたのに、ある日突然、脱力して背 中を丸くするように指導したら、長年の信頼関係も崩れることもあります。私の経験上、 言葉だけではなおさら難しいと実感します。背筋がピンと伸び、胸を張った患者さんは、 幼少のときからその姿勢を褒められてきました。それに対して、いきなり「その姿勢が悪 い」と言われても、それは自分自身を否定されたのと同じような感情が芽生えてしまい、 反発されます。

また、私の意見は真実であっても少数派なので、ヨガの先生やスポーツトレーナー、医 師や治療家などからは、ほとんどと言っていいほど猫背を否定されます。また全ての健康 関連の本は、「背筋を伸ばし、胸を張る」ことが良いと書いてあるため、「私を信じてく ださい」と言っても無理があるのは仕方がありません。私の親でさえ「猫背を勧める本を 書くのは止めろ」と言うくらいです。しかし、言葉だけでなく、映像などを使い理論を解 説し、セミナーなどで実際に体感されると、ほとんどの人は納得されます。その人の持っ ている姿勢の常識を変えるには、五感を最大限に使って感じてもらわなければいけませ ん。天動説から地動説にパラダイムシフトしたときにも1世紀はかかりました。やはりセ ミナーに参加された事のない人は言葉だけでは、長年のお付き合いがあっても、信頼関係 が崩れ疎遠となるケースが多いのです。「猫背が健康に良い」あの先生はとうとう気が狂 ったか!と思われるのでしょう。

間違った常識を早急に改革し、猫背は健康に必要だということを 世間一般に浸透させることにあります。マスコミが取り上げてくれれば、一瞬で猫背健康 法が日本国中に広まるのですが。

 

正しい矯正法

胸椎に後弯が必要なことはわかってもらえたでしょうか。姿勢を綺麗に見せようとする には、頭と骨盤を胸郭の真上と真下に移動すれば良いわけです。胸椎に働きかけるのでは なく、異常なカーブの腰椎と頚椎を矯正すれば良いのです。猫背の胸椎のカーブを維持し たまま、頭部と骨盤を重心線上に戻せば、頚椎は自然で理想的なカーブを描きます。腰椎 も骨盤を重心線上に移動すれば、自然で理想的な前弯を描き出します。

しかし、現実的には背中の丸い猫背の日本人は少ないので姿勢矯正は容易ではありませ ん。姿勢の良いといわれる日本人は皆、背筋を伸ばしたストレートスパインなので理想的 な姿勢に近づけるには胸椎を後弯に矯正しなくてはなりません。長年の間、背筋を伸ばし た胸椎の関節は固まっており、自力で背中を丸くすることは困難です。力ずくの矯正で も、なかなか背中は丸くなりません。長年の間、意識して背筋を伸ばしてきたように、継 続的に背中を丸くする意識が必要です。

 

矯正の順番

知恵の輪を外すときにも順番があるように、姿勢を矯正するときにも順番があります。 知恵の輪を無理やりこじ開ければワッカが緩むように、姿勢矯正も無理やり行うと関節に 負担がかかります。姿勢矯正も頭から矯正するか、骨盤から矯正するかはその人の姿勢、 構造によって変わってきます。

まずは側面、横を向いて鏡の前に立ってください。理想的な姿勢は、足の外踝、大腿骨の 大転子、肩鎖関節、耳の穴が鉛直線上にあることです。踝の位置を確認。大腿骨の骨頭の 位置を確認。外踝から垂直に線を上に引いた線上、大腿骨骨頭はありますか? 日本人多 くは、外踝からの沿直線上より前方に大腿骨の大転子は位置しています。

 

骨盤の位置を正常な位置に戻す

  • 前屈

肩幅に足を開き、膝を少し曲げ立ちます。その立位の状態から前屈します。そのときに 骨盤全体が後方へ移動します。大腿骨の骨頭も後ろに移動し、大転子と外踝の内側が鉛直 線上よりもかなり後ろに移動します。大腿骨を中心に屈曲したときに、腰椎も胸椎も丸く します。両手を膝の上の太腿の位置に置きます。その時、頭もうなだれます。

  • 脱力の確認

前かがみになったときには、膝を軽く曲げ、手を前に「だらーっ」としてください。背 中も力を抜き丸くなります。そして、手の力を抜いて上体を揺らしてみます。

  • 起き上がり

股関節での起き上がり。全身の力を抜いたまま、上体を起こしていきます。まず顔を起 こし、正面を向きます。胸郭と骨盤の位置は自然に固定したままで、急激に上体だけをそ らすような動作は避けます。斜めになった仙骨が垂直に起き上がるイメージで、上体全体 を一つのユニットとして股関節を主導に起こします。ある時点になると、自然に起き上が ることができなくなります。その時点から、骨盤が前方に移動します。

  • 骨盤での起き上がり

自然に骨盤が前方に移動しますが、移動するスピードを調整して前に行き過ぎないよう にしてください。骨頭はまだ鉛直線上の手前にあり、上体は15度前方に傾いています。お 腹が収縮した状態での自然な起き上がりが困難になります。その時点から、頭主導の起き 上がりが始まります。

  • 頭での起き上がり

頭部は少し伸展し、顎が少し前に出ています。頸椎の前弯が生まれます。同時に仙骨が 立ち、恥骨が持ち上がります。お尻にえくぼができる。または肛門が締まる感覚(中臀筋 が締まる状態)です。恥骨を持ち上げるときに胸郭全体も下げ、上下から腹筋が締まる感 覚があります。爪先が浮きそうになるので爪先で地面を鷲掴みにして、後方重心を保ちま す。

  • 起き上がり完成

この状態で、足の外踝、大腿骨の大転子、肩鎖関節、耳の穴が鉛直線上にあるのが理想です。また背中は丸く、肩の力が抜け、胸郭もやわらかい状態が必要です。従来の良い姿 勢は、足の外踝、大腿骨の大転子、肩鎖関節、耳の穴が鉛直線上にあっても、背筋が伸 び、胸を張った緊張状態にありました。

無理に背筋を伸ばさなくても、胸を張らなくても、脱力したまま背中が丸い状態でも 堂々としています。

  • 踵重心

理想的な姿勢には踵への重心配分が大きくなります。まず、前屈し骨盤を後方に移動し たときに、自然と踵に大きな重心がかかります。この感覚を常に覚えてください。指先に は重心はかかっていません。踵重心のまま起き上がり運動をします。立ち上がったときも 踵重心のままです。立ったとき、足の指を自由に動かせますか?

  • 良い姿勢での脱力

筋肉で立とうとせず、胸郭を骨盤の上に、頭部を胸郭の上に積み木を置きに行く意識で す。

今までとは全く違う姿勢で、良い姿勢を保とうと意識すると、どうしても余計なところ に力が入ります。馴染ませるために、腰を左右に振ります。右に腰を振ったときには、通 常、右肩は上がり、左肩は下がります。顔はいつも定位置にあり、頭は大きく動きませ ん。

 

理想的な姿勢のための準備運動

最初から理想的な姿勢をとるのは難しい。

背筋を伸ばし、胸を張っている人は、体がガチガチです。特に胸郭はガチガチで、肋骨 と肋骨の間は筋肉や靭帯で埋まっています。スペアーリブを思い出してください。弾力性 がありクッションの役割をしています。

しかし、常に背筋を伸ばしている人、胸を張っている人は、クッションの役割の胸板が コンクリートの壁のように硬くなり、12本の肋骨で作られた胸郭が一枚板になっていま す。この一枚板の胸郭を柔軟にし、肋骨一本一本が内臓を守るクッションとして機能する ようにしなければなりません。

 

アコーディオン体操

  • 左右のアコーディオン体操

まず椅子に座ります。胸郭を左右に移動します。右に移動したときに右肩は上がり肋骨 間は広がります。逆に左肩は下がり肋骨間は狭まります。体を左右に平行移動します。そ の時に左右に重心を移動することが大切です。顔は常に正面を向き、左右の目の位置は水 平です。左右5回ずつ体を動かしてください。最初は慣れないので、胸郭の肋骨の開閉を 意識してください。左右5回ぐらいゆっくりやってみてください。

  • 左右のアコーディオン体操の手足の連動

胸郭の動きに慣れたら、手足を胸郭の動きにあわせて動かしてみましょう。左に胸郭が 平行移動したときは、右に脚が流れます。右の股関節は内旋し、左の股関節は外旋しま す。膝から下もその流れに従います。左の膝頭は、右より前方に出ます。体重は左の坐骨 あたりにかかります。

右に胸郭が平行移動したときは、左に脚が流れます。左の股関節は内旋し、右の股関節 は外旋します。膝から下もその流れに従います。右の膝頭は、左より前方に出ます。体重 は右の坐骨あたりにかかります。左右5回ぐらいゆっくりやってみてください。

  • 前後のアコーディオン体操

今度は前後に胸郭を移動させます。前方に胸郭が移動したときは、胸を張った状態にな ります。前面の肋骨が広がります。そして、骨盤は伸展し、顔は顎を引いた状態になりま す。後方に胸郭が移動したときは、過剰な猫背になります。後ろ面の肋骨が広がります。 そして、骨盤は屈曲し、顎が上がった状態になります。目は常に同じところを見て、頭の 位置を安定させてください。頭位置の変化でなく、頭から下の身体の動きで、首が伸展、 屈曲しているように見えます。最初は全身の連動を気にせずに、肋骨の開閉を意識してく ださい。左右5回ぐらいゆっくりやってみてください。

  • 前後のアコーディオン体操の手足の連動

胸を張ったときには、手を外旋させます。そして、太ももを開いて外旋させます。胸郭 が後方に移動し、猫背になったときには、腕を内旋し、太ももも内旋、閉じます。胸部を 前後に移動しながら全身を連動させてやってみましょう。左右5回ぐらいゆっくりやって みてください。

 

足ぶらぶら運動

手は簡単に誰でもぶらぶらさせることができます。足をぶらぶらさせることができない 人が多いのにはびっくりします。常に体重がかかっている足は、老化、捻挫など怪我の後 遺症、間違った立ち方などで筋肉が硬縮しやすいこともあり、それが足をぶらぶらできな い原因となっています。足をぶらぶらしても、足首から先が、全く揺れなかったり、微小 にしか動かない人がいます。正常な人が足をぶらぶらさせると、足先は前後だけでなく、 少し横揺れし、サークルを描き回旋します。

「足ぶらぶら運動」ができない人は、太もものグーパー運動からはじめましょう。椅子 に座り、脚を大きく開いたり閉じたりします。大腿部がリラックスしていなければ、ふく らはぎも、足首も、ガチガチになります。足首やふくらはぎがガチガチで、太ももが硬い 場合は、まずは上に位置する太ももから緩めてあげましょう。腹部も硬ければ、太ももよ りも下腹部を緩めてから、下に位置する太ももを緩めましょう。まず、最初のテストのと きは、足先から順番にできるかどうか確認していきましょう。適当に動かしているうちに 治ってしまえば、それで良いのですが、また症状はぶり返します。まず、悪い状態と良い 状態の違いに気づいていないうちは、余計に快復を遅らせてしまいます。どこが悪いのか を気づく作業を始めにします。どこが悪いのかを確認して改善したほうが、喜びもあり治 りが早いのです。

 

太ももの脚回し体操

太ももから脚を上げ、外に回し、足を下ろします。膝は屈曲し、上げた足の方の骨盤が 上に持ち上がり腹部が収縮するのを確認してください。片足で立つのが不安定な人は安定 した物につかまってください。それでも負担のかかる人は、仰向けに寝てください。股関 節の動きと腹部が収縮したのを意識しながらやってください。股関節に可動域をつけ、腹 部、ソケイ部のリンパの流れを促進します。

 

肩甲骨の外転、内転とは?

「私猫背なのです」と治療院に来られるほとんどの人が猫背の対極にある平背です。背筋 を伸ばして胸を張っている人ほど、「背中(胸椎)が丸くならない、巻き肩(肩甲骨外 転)にならない」のです。

「胸を張る」(肩甲骨の内転)の逆は「巻き肩」(肩甲骨の外転)です。肩甲骨の内転は肩 甲骨と肩甲骨を背骨に向かって引き寄せる。・・・胸を張る姿勢です。肩甲骨の外転は肩 甲骨と肩甲骨を背骨から引き離す。・・・巻き肩の姿勢です。最近巻き肩の定義を変えて まで巻き肩を否定しようとする人たちがいるので、惑わされないように解説しておきまし た。

  • 巻き肩のほうが呼吸が楽で機能的です

日本では背中を伸ばしたり、胸を開くストレッチやエクササイズばかりで、背中を丸め たり、巻き肩にして、胸を閉じるエクササイズはほとんどありません。例えば、ストレッ チポールにしても胸を拡げ背筋を伸ばすようなエクササイズが主流となっています。前屈 運動は子供のころからやりますが、股関節を視点として屈曲するので、胸椎を屈曲する必 要はありません。長年の姿勢の習慣と背筋を伸ばし胸を開くエクササイズで、日本人特有 の平背、ストレートスパインが出来上がりました。また背中を反らし、胸を開くのは得意 でも、胸椎や腰椎を丸くしたり、巻き肩にすることができない日本人が大量にいます。背 骨を反らす、伸ばすの、一方向にしか背骨が動かないので、従来背骨が持つ可動域が低下 し、構造的に肩こりや腰痛の原因を作ってしまっています。

  • 巻き肩にするエクササイズ

ストレートスパイン(平背)で、背中(胸椎)を丸くできない人が日本人に多いです。 他動的な姿勢矯正でも、力ずくで無理やり丸くしようとしてもびくともしません。まずは 日常的なエクササイズで背中を丸める習慣を作りましょう。

いきなり胸椎を曲げることは困難です。胸椎が丸く猫背方向に曲がったと思っても、実 は胸椎は曲がっておらず、腰椎と頸椎だけ丸くなっている場合が多いです。胸椎を丸くす る準備段階として、まず、巻き肩を作りましょう。

手を前でクロスして、左右の肩甲骨を拡げて両肩、両腕を前に持っていきましょう。 「だっちゅうの!!」のように左右の方を前で狭めて、左右の胸近づきます。この時顔が 前に出ないように、肩が前に出た分だけ顎を引いて顔全体を後方に平行移動してくださ い。また、肩を上げずに、なるべく肩を下げてください。

呼吸は、最初は息を吐きながら左右の肩を前に近づけ巻き肩をしたほうがやりやすいで す。慣れてきたら左右の肩を前方で近づけながら、息を吸います。空気を背中に入れるよ うな意識を持ってください。慣れるまでは一呼吸ごとに巻き肩にしては緩め巻き肩にして 緩めをやるといいです。慣れてきたら巻き肩のままで4、5呼吸ぐらい巻き肩でやってみて ください。巻き肩エクササイズはストレートスパイン(平背)やストレートネックを改善 するための第一歩のエクササイズです。私も暇さえあればやっています。

  • 肋骨位置、胸郭の形はすぐ変わる?

胸を張って背筋を伸ばすと肩幅が横に広く見え、ウエスト周辺の下部肋骨も広がりま す。逆に、巻き肩にすると肩幅が狭くなり、ウエスト周辺の下部肋骨も狭くなります。肋 骨は呼吸と連動していつも動いているので、姿勢の変化によっても動きやすくなります。

あなたは肩幅の広い、胸郭の広がった人になりたいですか?それとも肩幅の狭く、胸郭 の狭い華奢な人になりたいですか?

つい最近まで巻き肩にして胸郭を狭めると不健康だといわれていました。100年前の常 識では胸腔や腹腔を狭めると内臓を圧迫し機能低下を起こすといわれています。(胸腔、 腹腔とは・・・体壁に囲まれた内部の空間を「体腔」と呼び、上下空間を横隔膜で仕切ら れています。肺・心臓などが収まっている上部の空間を「胸腔」、消化器・泌尿器等が収 まっている空間を「腹腔」と呼んでいます。)しかし、現在は肋骨に可動性があれば、胸 腔や腹腔が狭まることは、呼吸を深くなり、リンパの循環をよくし、内臓の機能を向上さ せることがわかっています。胸腔、腹腔を狭めることを4DS※では減腔と言っています。 どんどん巻き肩にして、胸椎を丸くし、胸腔を狭めましょう。

※ 4DSとは・・・身体全体や姿勢を見る、生体物理学に基づいたカイロプラクティックをベースに開発された、理想的な丸い背中「前肩」を作り出す理論を体系付けられた理論です。4DSにおいての理想的な姿勢 は、前肩(前にねじれた肩)で一般的には悪いとされている姿勢です。 この理論は一見、常識外の理論の ように聞こえますが、解剖学、機能生理学、物理学などを用いて提唱されている理論であり、背筋を伸ばす より猫背が身体に良いと理論的にも証明できるものなのです。

  • 世界初の減腔グッズ「クリエピロー」

ストレッチポールは、胸を開く方向、胸腔を拡げる方向のストレッチを得意とします。 今までの健康と姿勢の常識は、胸を張り胸腔を拡げる方向だったため、胸腔を狭めたり、 巻き肩にするようなエクササイズや健康グッズはありませんでした。

クリエピローは枕でありながら、胸腔や腹腔を狭めます。 背筋を伸ばし胸を張っていると、胸郭や肋骨は横方向に拡がり背中は平らに、変形してい ます。クリエピローは仰向けに寝ることで、巻き肩にし、肋骨を本来あるべき丸い方向へ 矯正します。また、胴体部分が長いため頭を持ち上げることなく胸郭全体を持ち上げ、胸 腔だけでなく、腹腔も減腔します。従来はうつ伏せ用の治療院枕として開発されました が、矯正枕、エクササイズの枕としても愛用されています。

  • エクササイズの常識も変わる?

「胸を張る、背筋を伸ばす」という姿勢の常識が変われば、エクササイズやアスリートの トレーニングの常識も変わります。マラソンなどで疲れてくると肩が上がったり、顎が上 がってきます。肩が上がると胸腔や腹腔は、拡がり膨張します。これは自己防衛本能で、 腔が広がることは疲れすぎた体を休ませるためのブレーキなのです。

クリエピローは寝ながら拡張した腔を狭め、疲労を回復させようとします。私も体が疲れて朝起きたくない時などに、布団の中で、寝ながら減腔エクササイズをすることで気持 ちよく目覚めています。また呼吸が深くなり全身に波動するので、リンパの循環が良くな り、パンパンだった顔や硬かった頭皮まで柔らかくなります。近い将来、アスリートは減 腔エクササイズを練習の後や試合の後にする時代がもうすぐ来るでしょう。

クリエピローを使ったエクササイズ法などは、4DSの姿勢分析師か、最寄りのクリエピ ローの代理店で問い合わせてください。

 

理想的な猫背

脱力した猫背が理想的

全ての関節は少し曲がった状態にあります。正常な人が立った状態のときは、肘も、指 先も、膝も、軽く曲がっています。ニュートラルで力の抜けた状態です。この状態であれ ば屈曲位や伸展位にもすぐに対応できます。隣から体当たりされた場合でも、関節に遊び があるため関節を痛める可能性が少なくなります。逆に学校で行われる挨拶の「起立、気 をつけ」の「気をつけ」の姿勢では全ての関節は伸展されています。伸展では関節が伸び て曲がってない方向です。

この状態で衝突されると、方向によっては関節の遊びがないの で、関節を痛めやすい状態にあります。「気をつけ」は交感神経優位の状態であり、急性 痛、慢性痛の原因となります。「だらーっ」とし過ぎると、副交感優位になり、やる気を 失います。日本の教育は「気をつけ」を自然で理想的な姿勢としています。しかし、自然 な姿勢とは「気をつけ」と「だらしない姿勢」の中間にあります。これは闘う必要がある ときは「気をつけ」休むときは「だらり」となるように、通常は自然体でいることが正常 です。「気をつけ」になるように矯正するということは、猫で言えば「常に毛を逆立て て、怒っていろ」と言っているようなものです。

 

肩甲骨の位置

姿勢や健康関係の書物に掲載されている理想的な姿勢の写真やイラストのほとんどは 「胸を張った姿勢」です。力の入ったきつそうな姿勢であり、胸椎も、頚椎も理想的なカ ーブはありません。胸を張った姿勢は左右の肩甲骨が一つの平面状に水平に並んだ状態で す。後ろから背中を見ると、背中は平らで全く丸みがありません。左右の肩甲骨を中央に 近づけると、胸を張る姿勢では背中は平らになります。これは交感神経優位な姿勢です。 左右の肩甲骨を離そうとすると、背中は丸くなります。もちろん副交感神経優位の姿勢で す。

この中間が理想的な姿勢となるのです。胸を張ることにも、背中を丸くすることにもど ちらにも即座に対応できる効率的な姿勢です。「胸を張る姿勢」は極端に胸部が丸く、背 部は平らな姿勢を作ってしまいます。意識的に胸を張ることを続けると、靭帯が変性され 無意識でもそれが自然な姿勢となってしまいます。そこまで続けると、肋骨が歪み変形し てしまい自然な丸い形に戻らなくなります。楕円のはずの肋骨がトランプのスペードのよ うに前方では胸骨を頂点として、後方では中央にえぐるように脊椎に付着してしまいま す。ヨガの本、ストレッチの本、姿勢の本など、どの本を見ても胸を張りすぎた姿勢であ り肩甲骨が平面上にあり背中が平らです。 理想的な肩甲骨の位置は、胸郭との丸さを持って30度前方に傾いている、巻き肩、前肩の 姿勢なのです。

 

顔を小さくする方法

顔の大きさは、姿勢の矯正により大きく変わります。実際は顔の幅は数ミリ程度しか小 さくなりませんが、見た目の印象は別人のように小さくなります。

もともと姿勢の良い人 は変わりにくいのですが、姿勢が悪い人は改善しやすくなります。まず顔が重心線より前 に出ている人、つまり上半身よりも前に顔を突き出している人は改善の余地が大いにあり ます。次に顎が常に上がっている人、口をよく開けている人も改善の余地があります。遠 近法(遠くの物は小さく見え、近くのものは大きく見える)を活用しているのですが、見 た目が大きく違います。

顔が前に出ている人は、20cm以上も正常な位置より前ありま す。相手との距離が近くなるため、実際の顔よりも大きく自分の顔を見せているのです。 また肩の位置よりも前にあるため、後方にある肩は遠近法的に小さく見え、顔ばかり大 きく目立って見えるのです。

 

筋膜の影響

顔にサランラップをあてて、そのまま前方に顔を移動させると、鼻はつぶれ顔全体が横 に広がります。これと同じようなことが実際に起こっています。顔が前にあると頬や首の 皮膚、筋膜、筋肉は引っ張られ、実際に顔は大きくなります。ヨットの帆は風がないとき はしぼんでおり、風が吹くと、ぱっと拡張し、広がるのと同じイメージです。筋膜とは筋 肉を包む膜で、全身でつながっています。顔や頭部が前に並行移動するとヨットの帆が広 がるように皮膚と筋膜も広がり、顔が大きくなります。

 

姿勢でダイエット

お腹は出ていないのに自ら出す日本人

胸部や足部は細いのに下腹がぽこっと出ている若い女性。幼児体型と呼ばれるもので す。また、中肉中背の男性や女性もお尻をぽこっと出し、わざわざ胸を張りお腹を突き出 しています。そして腰部は反り返っています。わざわざ、なぜ自分から太った格好に見せ るのでしょうか。

これは胸を張るのが健康に良い姿勢ということの弊害によって起こっています。胸を張 ると自然にお腹は出ます。腹筋が凸になり、背筋は凹になります。太ってないのに貧相に 太って見える、残念なことです。姿勢を意識するだけで、3kgから5kgの体重が減った体 型に見えます。5分ぐらいのコーチング(指導)で、出たお腹がへっこみ、顔が小さく見 え、全体的にスリムに見えるようになります。

まず前方に出すぎている骨盤を後方に移動させ、腹部の無駄な肉を反りすぎて凹んだ背 中へと移動します。これでお腹の出っ張りは解消します。後は、骨盤を後方に移動させる と、反動で上半身が前方に屈曲するので、頭を起こし、頭を重心線上の延長まで持ってい きます。そのときに骨盤が再び前方へ移動しようとするので、肛門に力を入れ移動を阻止 します。そうするとお尻にえくぼができヒップアップし、反りすぎの骨盤も正常の位置に 戻ります。

頭を後方に移動するとバランスが取れなくなり、ふらつきます。そこで腕部を前方に持 っていき、胸を寄せ胸骨が後方に移動します。頭部と臀部が後方へいった分だけ、肩と 胸、腕でバランスを取ります。この状態では腹筋部、下腹部に少し力が入り、腹部はその 位置を保とうとするだけで緊張状態が続きます。この姿勢では、頭の中心、胸の中心、骨 盤の中心が、重心線の鉛直線上にそろいます。

出過ぎているところが引っ込み、引っ込み過ぎているところはふっくらとなる。実際に は体重は減っていませんが、55kgの人が50kくらいに見え、締まって見えるのです。実際 に「私は何kgです」という名札をつけて歩いているわけではないので、数値を気にするよ りも、引き締まって綺麗に見えるように、見た目のイメージを気にした方が得策です。

イタリア人は体重が重いのに、痩せてスタイルが良く引き締まって見えます。日本人は 体重が軽いのに太って歪んで見えます。もちろん、イタリア人の食べる量は、日本人の倍 以上なのにです。

 

意識し続けると痩せます

お腹を突き出した姿勢では、全体の重心軸が歪み、新陳代謝、体液循環が悪くなりま す。むくみや冷え性という症状になりやすくなります。脂肪太りでなく水太りで下半身デ ブになります。内蔵の血液循環も悪くなり、消化吸収も悪くなります。また、体の歪みに より腹圧がかかりにくくなり、便秘の原因になります。老廃物が溜まりやすくなるとにき びや吹き出物も出ます。便を何日も溜めておくこと自体、体重のアップ、下腹部の出っ張 りにつながります。

理想的な猫背の姿勢を一ヶ月ぐらい意識し続けると、便秘、むくみも解消し、余分なも のを体から排出するシステムが出来上がります。ここから見た目だけでない本当のダイエ ットが始まります。最初の一ヶ月で、3kgは簡単に減ります。また、効率的に立ったり歩 いたり動いたりすることができるようになり、ふくらはぎや太ももの余計な肉も不必要に なりスリムになります。

さらに、姿勢により胸郭で腹部を圧迫し、呼吸による横隔膜の動 きが大きくなるため、内臓脂肪も燃焼されやすくなります。週3回ジムに行っても1、2時 間、そのときだけのカロリー消費にしかなりません。姿勢を正しく意識するだけで、日常 生活全般でダイエットができます。胸郭を閉め、猫背になることで、新陳代謝がよくな り、寝ているだけでも消費カロリーが上がります。ジムに行き筋肉をつけるのは、無駄な 肉の上に更なる無駄な筋肉をつけるという悪循環が起こります。なぜなら姿勢を意識せず に体を動かすと、動きも偏りがちになり、偏った筋肉のつき方をします。理想的な姿勢を 意識するだけで、無駄な肉を削り必要な筋肉だけ残る綺麗な体型が出来上がります。

 

美乳の創り方

美乳はみなさんもご存知のように、寄せて上げて創られます。矯正用のスーツやブラを 着用するときには、背中からもお腹からも贅肉を引き上げます。寄せて上げれば、乳房は 大きく見えるのが分かっているのに、実際、日本人の女性は、全く逆のことを姿勢で意識 しています。胸を広げて突き出しているのです。それはまさしく胸を張る姿勢です。胸を 張れば乳房は広がります。下着をつけるときには、一生懸命に寄せていても普段行動する ときには、胸を張り一生懸命に広げようとするので無意味です。また、バストを上げるの は頭の位置で決定します。頭をうなだれていれば、乳房は下がります。また、顔が前方に 位置すれば、乳首は下を向いてしまいます。どうも日本人女性は胸を張ることでバストア ップと美乳ができると勘違いしています。胸を張ると大抵は貧乳になります。確かに胸を 張る方法でも、やり方によってバストは上がりますが乳房が離れてしまいます。

また、胸椎の7番辺りがカーブの頂点になるべきですが、この場合、胸椎の1番辺りがカ ーブの頂点となります。構造的に慢性の肩こりになりやすい姿勢です。

それではどのようにしたら美乳ができるでしょう。簡単に言うと、正しい猫背になる と、豊満な美乳が出来上がります。イタリア人女性で、服の上から見ても貧乳だと思える 人は見たことありません。大体痩せてスリムでも豊満な胸を持っています。貧乳のイタリ ア人女性を見たときは、この人は何かの病気でも患わっているのかも知れない、と思って しまいます。イタリア人女性と比べると病気に思えてしまうような貧乳の女性は、日本女 性では頻繁に見かけます。しかし、日本では多くの女性が貧乳でも、誰も病気に見えませ ん。これはただ単に民族的な違いだけではなく、姿勢の習慣が大きな影響を及ぼしていま す。イタリア人は理想的な猫背であり、決して胸を張りません。両肩は内に入り胸を自然 に寄せています。顔は前方に位置せず、どちらかというと重心線の真上かそれよりも後方 にあります。頭部が前方にあると乳首の位置は下がりますが、「頭部を後方に位置するこ とにより、頭部と筋膜でつながった大胸筋と乳房を引き上げています。」